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新人経理担当者のための仕事術 第8回

経理が扱うすべてがインサイダー情報! 経理担当者に求められる心構え

[ 村井 直志<むらい・ただし>(公認会計士)]

「経理」という仕事はじつに奥深く、会社の根幹を支える大事なものです。本連載では、「豆を仕切れる人」になるために、これだけはぜひ知っておいてほしい経理担当者のリテラシーについてお伝えしていきます。

新人経理担当者のための仕事術

「数字=インサイダー情報」と肝に銘じよう

 経理担当者は、経営者をはじめとするビジネスパーソンと「数字」を使って意思疎通を図ることが仕事です。「数字はコミュニケーションツール」であることを心に留めておく必要があります。

 「数字」の中には、合併や買収というM&Aに関する情報や新製品開発等の会社の機密事項にかかるデータ、役職員の給与・人事データなどの個人情報も含まれています。
 新任経理のみなさんにとって、それほどの意味をもたないと感じる情報であっても、ある人からすればたいへん貴重な情報の場合もあるので、取り扱いには細心の注意を払う必要があります。

 特にインサイダー取引には留意してください。

 インサイダーとは、「内部」という意味です。つまり、新任経理担当者が扱っている情報は、すべてインサイダー情報なのです。
 思わぬ形で情報を漏らすことがあれば、皆さん自身がインサイダー取引に巻き込まれて嫌な思いをすることもあるので、くれぐれもデータや情報の取り扱いには留意してください。

 インサイダー取引に巻き込まれ意図せず罰せられないために、最低限、以下の「4つのキーワード」を理解しておきましょう。

■インサイダー取引規制と4つのキーワード

会社関係者は、②重要事実を知った場合、その事実が③公表されるまでの間は、その会社の④特定有価証券等の売買等を行ってはならない。

①会社関係者
…上場会社とその親会社・子会社の役員のほか、社員・パートタイマー、アルバイト等、重要事実の伝達を受けた「情報受領者」も含まれる
②重要事実
…その会社の株価に影響を与える「重要な会社情報」
③公表
…報道機関に公開後、原則12時間経過が「公表」とされる
④特定有価証券等の売買
…「特定有価証券等」には、株券、社債券、優先出資証券、新株予約権証券、カバードワラント、他社株転換条項付社債券などが含まれる

 最近は、LINEやTwitter、Facebookなど、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)によるコミュニケーションが盛んですが、新製品開発公表前に、「今度うちの会社から○○が出ます!」などとひと言呟いただけで、たいへんな目に遭うこともあるので留意してください。

経理担当者に欠かせない“誠実で論理的な思考”

 ごく稀にですが、横領などを起こした経理担当者をそのまま経理部門に在籍させ続ける会社を見かけることがあります。
 経営管理者の中には経理の仕事に対して理解が浅い人もおられるので、ときとしてこうしたことが起こりますが、筆者はその企業の無神経さを疑います。

 不祥事を起こした経理担当者に、機密事項などの重要データや会社の資産を管理させるのは、本来あり得ないことだからです。

「会社で知った情報は漏らさない」
「会社のデータは持ち出さない」

 事実(数字)をもとに論理的に思考できることに加えて、経理担当者には誠実な態度が不可欠です。

▼連載「新人経理担当者のための仕事術」

本記事は、『即戦力になる!基本が身につく 経理に配属されたら読む本』(日本実業出版社)より内容を抜粋し、企業実務オンライン用に再構成したものです。

『即戦力になる!基本が身につく 経理に配属されたら読む本』

『即戦力になる!基本が身につく 経理に配属されたら読む本』
村井 直志 著 日本実業出版社 発行 A5判 208頁 定価1,400円(税別)

経理に配属された新人が「即戦力」になるために必要な基本知識を解説

「経理部に配属されたものの、仕事の全体像や実務がよくわからない」という人向けに、会計・税務に関する基本事項のほか、業務をするうえで必要不可欠なエクセルの活用術を解説。
即戦力となる経理担当者に必要なスキルが、この1冊で身につきます。

著者 : 村井 直志<むらい・ただし>(公認会計士) 中央大学商学部会計学科卒。税務事務所、大手監査法人、コンサルファーム、東証上場会社役員などを経て、公認会計士村井直志事務所を開設。ビジネスにまつわる「数字」をわかりやすく伝承するアカウンティング・キュレーターとして、経営コンサルティング・監査・不正調査のほか、セミナー・執筆を行う。
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