部下とのコミュニケーションは積極的に
上司は、部下を仕事のできる人材に育てなくてはなりません。ある意味では上司は教育者でもあると言えます。部下からの報告や連絡が上司に滞りなく流れ、部署内での情報が共有できるような仕組みをつくるためには、部下が相談をしてきたら積極的に対応してあげなくてはいけません。その上で部下には、次々とチャンスを与えていきます。
上司自らが部署内で共有すべき情報を一人で抱え込んで、内緒にしたり、聞かれた時だけ答えるなどケチな根性ではいけません。
部下があまり報告に来ないようであれば、上司のほうから積極的に質問をして部署内の情報交換がスムーズになるように改善します。
本気で叱るのも上司の役目—「叱る」と「怒る」は違う
一方で、部下が間違ったことやまずいことをしたら、叱ることもまた上司の役目です。あなたは、まずいことをする部下を本気で叱れますか?
昨今ではパワハラなどの問題もあり、叱りたくても叱れない、あるいはうまく叱ることができずにお悩みの管理職の方も多いことでしょう。
ここで確認しておきたいのは、叱るとは「怒る」ことではありません。相手がまずいことや間違ったことを行った場合に、本人にそのことをきちんと認識させ、反省を促し、次に同じことをしないように諌める行為のことです。ただただ感情の起伏に任せて怒鳴りつけたりする、「怒る」という行為とは根本的に異なります。
叱ることは社員教育の一環でもある
どうやら近年では、学校の先生も生徒を叱らなくなっているそうです。私が子どものころは、不出来だったせいもあり、親にもよく叱られました。しかし現在では、まわりを見ても、親が子供を叱ることはほとんどありません。ただ、会社では叱ることも社員教育の一環です。「1年間1回も部下を叱らないで、成果はまったく達成できなかった」などということがあってはならないのです。
部下は放っておいて、自分のことだけで精一杯というのでは上司としては失格です。しかし、パワーハラスメントという概念もあるため、あまり叱りすぎるのもいけません。
部下を上手に叱るコツ8か条
それでは、どういう叱り方が一番効果的なのでしょうか。上手に部下を叱るコツを8項目、提示します。
1.声のトーンを抑える
叱るときはつい感情がこもってしまい、どうしても声が大きくなりがちです。しかし、これでは部下がおびえてしまい、肝心の内容が部下に伝わりません。
叱る前にひと呼吸おいて、相手に話す内容を頭の中で整理するか、メモに書き出してから話しはじめると、うまくいくことが多いのです。
2.ゆっくり話す
声のトーンと同様に、話すテンポも重要です。感情が先に出てしまって、早口になってしまうことはありませんか? 叱るときには、ことさらゆっくりしゃべるようにすると、言いたいことが伝わるものです。
3.相手に目線を合わせる
部下を自分の机に呼びつけて、立たせたまま叱ってはいけません。自分も立つか、部下を座らせてから話します(通常の業務命令などの場合には、こだわる必要はありません)。叱るときは、相手に目線を合わせる努力をします。
上目使いは、相手に「信用されていない」という印象を与えますし、下目使いは「バカにされている」という印象を与えます。
4.「アナザーセルフ」=もう一人の自分を意識する
他の場面でもそうですが、叱るときは「アナザーセルフ」(もう一人の自分)を意識するとうまくいきます。「叱っている自分」を「もう一人の自分」で客観的にながめられるようになり、心に余裕が生まれます。これは役者の方が初期段階で必ず習う方法のひとつですが、普段から心がけていると、非常に冷静な自分を演出できます。
発表やプレゼン、講演などを行う際にも有効な手法です。
5.叱りっぱなしはダメ! 最後にフォローを
叱りっぱなしもいけません。叱られた部下が、自ら反省し、考え、対処できるように、逃げ道を作ってあげます。叱った後に「どうしたらいいか、考えておきなさい」「これができれば問題はないよ」などのようにフォローすることで、部下に反省の機会を与え、成長につなげてあげることが重要です。ただただ叱りつけるだけではかえって逆効果になりかねません。
6.近づきすぎない
叱るときは、相手との距離を一定に保ちます。相手が女性の場合には、特にそうすべきです。一般的には 150 センチほど空けるのが理想です。そうすればパワハラなども起こりえません。
叱るときではなく、相談を受けるときや仕事を依頼するときには、もう少し近づきます。距離の取り方によって、相手の受ける印象は大きく変わってくるものであり、言いたいことが効果的に伝わるかどうかが決まるのです。
7.相手の言い分を聞く
叱られるほうにも言い分があるかもしれません。叱るだけでなく、相手の言い分も聞いてあげる努力が必要です。否応なしに叱りつけても効果は期待できません。言い分も聞き、場合によっては一旦ほめてから叱るようにできればしめたものです。
8.相手が喧嘩腰のときは叱らない
相手が喧嘩腰のときに叱ってはいけません。別の機会に、喧嘩腰であったことを諌めてから再度話し始めます。
中には叱っても効果がなく、改善がみられない部下もいるでしょう。そんなときは処分の対象とすべきであって、同じ土俵で一緒に喧嘩をする必要はまったくありません。
- ▼連載「やってはいけない会社の人事」