モンスター社員や改善されないローパフォーマーに対して堪忍袋の緒が切れた役員や管理職がつい口にしてしまう言葉、「おまえなんか、クビだ!」。
お気持ちは察しますが、後々、本人から退職の意思表示があった際に、
「あの時私は、部長から『クビだ!』と言われました。だから、会社都合の退職になりますよね?」
などと言われることもあるのです。
「おまえなんか、クビだ!」は、管理職が絶対に言ってはいけない言葉のひとつです。
こんなときについ言ってしまう「おまえなんかクビだ!」
- 何度も同じミスを繰り返す社員に「おまえなんかクビだ!」
- 遅刻・早退・欠勤を繰り返す社員に「おまえなんかクビだ!」
- お客様や取引先に損害を与えた者に、「おまえなんかクビだ!」
解雇は3種類に分類される―「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」
解雇とは、会社が一方的に社員との労働契約を解除することですが、解雇の理由により以下の3種類に分類されます。
■普通解雇
能力不足や勤怠不良が顕著であり、会社に損害を与えていることが明らかな社員に対して、会社が一方的に労働契約を解除すること(契約に対する約束違反)
■整理解雇
経営不振や倒産等の経営上の理由により、会社が一方的に労働契約を解除すること。
■懲戒解雇
会社に対する重大な違反(懲戒行為)をした社員に対して、会社が一方的に労働契約を解除すること。
合意による退職を目指すべき
解雇とは、会社が一方的に労働契約を解除するものです。
解雇により社員が1人いなくなっても、会社への影響は特にありません。しかし、社員にとっては、生活基盤を奪われかねない重大な行為です。
そのため、日本では、特定の者を除いて、雇用を継続するために手を尽くした後の最後の手段として、やむを得ず解雇が行われるものと解されています。
ひとたび解雇問題で裁判沙汰となれば、多大な時間と費用を費やすことにもなりかねません。会社の基本姿勢としては、まず合意による退職を目指すべきです。
社長であっても簡単に懲戒解雇はできない
解雇が有効とされるには、ケースに応じた様々な事実の積み重ねが必要です。社長でも安易に「おまえなんかクビだ!」と言ってはいけないのです。
特に、懲戒解雇に当たる案件の場合は、解雇対象の社員には弁明の機会を与えなければならず、就業規則を根拠に手続きに従う必要があります。
社長であっても社員を懲戒解雇する権限はありません。
解雇が有効かどうかを判断するポイント(労働者の責めに帰すべき事由)
それでは、どのような場合であれば解雇が可能となるのでしょうか。解雇の有効性は、おもに以下のような項目によって判断されます。役員や管理職の方で、解雇を検討している場合は、もう一度各項目について確認してみてください。
■企業の種類や規模
■解雇対象社員の職務内容および採用理由
- ・特定の地位・能力(管理職、高度専門職等)を付与しているか
- ・会社が求める能力水準を満たしているか
■解雇対象社員の勤務状況(勤務成績・勤務態度等)
- ・業務上支障をきたすようなレベルなのか
- ・実際に業務に支障があるか、またどれほどの支障をきたしたか
- ・本当に解雇しなければならない程のレベルなのか
- ・業務上のミスが何回あったか
■違反行為の状況
- ・職務専念違反や業務命令違反、信用保持違反等が何回あったか
- ・違反行為が重大か、また業務や職場秩序への影響はどれくらいか
■改善の余地はあるのか
- ・注意・指導を行ったのか、改善の機会を与えたのか
- ・他の労働者との扱いに不均衡はないのか
■使用者側に責任はないのか
- ・違法な行為はなかったのか
- ・業務上必要な支援等は行っていたのか
- ・業務上の支援等について他の労働者との扱いに不均衡はないのか
- ▼連載「やってはいけない会社の人事」