これってパワーハラスメント? 判断のポイント
上司によるパワハラが疑われる場合、その言動が業務上必要な範囲内のものか否かで判断していくこととなります。
●業務上の関連性・必要性
業務と直接関係のない部下のプライベートな部分について、執拗に質問をしたり、口出しする、うわさ話をする等は、パワハラに該当する可能性があります。
業務に関連しない・必要性のないことに対する指導、叱責、強要など
①まだ結婚しないのか?
結婚については完全にプライベートな問題です。職場では質問しないことが賢明です。以前は「管理職ならばここまで部下のことを気にするものだ」という風潮もありましたが、現在ではこれらの質問自体がパワハラだと言われます。同様に「彼氏・彼女はいるか?」も望ましくはありません。
②子供はまだできないのか?
子供の問題は、個人によっては非常にデリケートな問題でもあります。女性への質問ならばセクシュアルハラスメントにもなり得ます。
③身体的な特徴についてあだ名をつける
あだ名をつけられたことを不快に思い、最終的にはパワハラで訴訟問題となったケースがあります。女性を○○ちゃんと呼ぶ行為なども避けたいところです。
④終業後の誘い(宴席など)
勤務終了後に酒や食事をすることはあり得ますが、その頻度と上下関係によってはパワハラと認定されることもあるようです。毎日のように特定の部下を誘わないことです。
⑤休日の誘い(ゴルフ、引越しの手伝い)
私が若いころには、上司が引越しをすると聞けば駆けつけたものです。しかし、休日に他の社員と会うのを強制すること自体がパワハラとなる場合があります。立場を利用した私的行為、と認識されることが多いのです。
●業務上必要な範囲
業務上必要な範囲の指導や教育であるかについては、明確な基準がありません。社会通念上および常識的な判断をモノサシとすることになります。
パワハラの可能性があると思われる対応
①必要以上に大声で叱責する。
誰もが驚くほどの大声で叱責することはパワハラになりそうです。声の大きさが、〈暴力に該当する〉という判例もあります。そもそも叱責は大声になりがちですが、ちょっとした心掛けで修正も可能です。
②仕事の失敗や実績について執拗に追及、繰り返し叱責する。
パワハラの要件の中に“繰り返し”というのが出てきます。同じ事柄について、来る日も来る日もしつこく叱責するような行為がこれに当たります。
③全員の前で見せしめのように叱責された
「同僚たちの前で恥をかかされた」などがよくパワハラ裁判で出てきます。失敗をした1人を全員で取り囲むようにして追及したような場合も含まれます。
④達成不可能なノルマを与える。
パワハラに関するセミナーでこれを解説したとき、多くの聴講者がうなずいたことがあります。営業会社などでは特に注意が必要です。
本来なら、業務の範疇であれば多少のことはパワハラになりようがありません。あくまでも注意すべきなのは、〈業務に関係のないところでの発言〉などです。
しかしながら、たとえ業務の範囲であっても、「必要以上の大声」「叱責の場所」「頻度」「達成不可能な要求」などは、もちろん避けるべきでしょう。
- ▼連載「やってはいけない会社の人事」