ニーズを把握して社内制度の整備を
介護離職を防ぐためには、まずアンケート調査などを実施し、介護不安を抱える社員の実態を把握することが欠かせません(“隠れ介護”を見逃さない! 社員の介護実態とニーズを把握する)。
そして、介護に関わる社員の状況とニーズを把握したら、次は公的支援制度(育児・介護休業法)を前提に、社内制度を整備します。
制度の運用をしやすくするためには、自社の状況に応じた柔軟な働き方や、新たな支援策も検討するとよいでしょう。
介護休業よりも「働き方の選択肢を増やす」対応を
ちなみに明治安田生活福祉研究所が2014年に実施した「仕事と介護の両立と介護離職」に関する調査では、働きながら介護している人が利用することが多い制度として、
- 年次有給休暇
- 半日単位・時間単位の有給休暇
- 遅刻、早退、中抜けなど柔軟な対応
が上位を占めました。
介護というものは、終わりが見えないことが大きな特徴で、周りの人が思う以上に、当人にとっては不安な状態が続きます。
介護休業を取得できたとしても、その間の減収や介護費用の負担、そして介護によってもたらされるストレスなどが、離職の引き金になることもあります。
仕事と離れる時間が長くなるほど職場復帰もしにくくなりますので、介護休業を取得するよりも、むしろ短時間勤務など働き方の選択肢を増やし、勤務を継続するほうが、労使双方にとって有益なケースも少なくありません。
たとえば、取得しなかった年次有給休暇をストックしておき、介護などやむを得ない場合に取得できる「ストック休暇制度」、労使協定を締結し、年次有給休暇を半日あるいは時間単位で取得できる「時間休取得制度」を導入している企業もあります。
こうした制度を活用する場合、煩雑な休暇の管理は、書面あるいは社内ネットワーク上で行います。社員各人に休暇の申請書を兼ねた管理表を配布して、労使双方で共同管理したり、市販のシフト作成ソフトなどを活用したりしてもよいでしょう。
このほか、「フレックスタイム制度」「在宅勤務制度」「裁量労働制度」などのワーク・ライフ・バランスに配慮した制度は、仕事と介護の両立にも有効な手段です。
自主的に休暇の取得時期を調整するしくみなど、状況に応じて取り入れてみてください。
制度を利用しない社員への配慮も大事
ここで注意したいのは、制度を利用した社員の評価・処遇をどうするかです。
評価基準が明確でなければ、制度を利用しない社員が不満や不安を訴えてくる場合もありますし、異論の多い制度なら、利用をためらう社員も出てくるはずです。
せっかく良い制度を作っても、利用しにくいのでは意味がありません。実効性を高めるためにも、具体的な評価基準を定め、周知しておくことが大切です。
これは育児休業等のケースでも同様です。
制度を利用しない社員への配慮も含め、休みがとりやすいなどワーク・ライフ・バランスに配慮した勤務体系づくりをしていきましょう。
※本記事は、月刊「企業実務」(2015年4月号)に掲載した「介護離職を防ぐ職場環境をどのように整えるか」を2016年6月現在の法令に基づき、企業実務オンライン用に再構成したものです。