Q1
定期健康診断の受診に従わない社員には、どのように対応するべきでしょうか。
定期健康診断の受診に従わない社員には、どのように対応するべきでしょうか。
定期健診は、社員に受診義務があるため、拒否することは許されません。
したがって、受診を何度促しても拒否する社員については、必要に応じて懲戒処分を科すことが考えられます。
定期健診は、健康診断であり、労働安全衛生法66条5項においても、受診が社員に対して義務づけられています。
② 社員が拒否する場合
それにもかかわらず、社員が拒否する場合は、就業規則の規定に基づき、懲戒処分を科すことが考えられます。
ただし、会社が指定した健診機関で受診することまでは強制できません。定期健診に相当する健康診断を受診し、他の健診機関でその結果を証明する書面を会社に提出することは認められています。
Q2
雇入れ時健康診断と定期健康診断において、省略可能な項目はあるでしょうか。
雇入れ時健康診断と定期健康診断において、省略可能な項目はあるでしょうか。
一定の場合において、検査項目を省略できます。雇入れ時健康診断と定期健康診断の場合に分けて説明しましょう。
① 雇入れ時健康診断
医師による健診を受けてから3か月以内の者が、その結果を証明する書類を会社に提出した場合は、その受診項目については省略することができます(労働安全衛生規則43条但し書き)。
たとえば、転職者が以前の会社で受けた健診結果を会社に提出した場合などです。
② 定期健康診断
医師が必要でないと認める時は、以下の検査項目は省略できます。
項目 | 省略できる者 |
---|---|
身長 | 20歳以上の者 |
腹囲 | ① 40歳未満(35歳を除く)の者 ② 妊娠中の女性その他の者で、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断された者 ③ BMIが20未満である者 ④ BMIが22未満であって、自ら腹囲を測定し、その値を申告した者 |
胸部エックス線検査 | 40歳未満のうち、次のいずれにも該当しない者 ① 5歳ごとの節目年齢(20歳、25歳、30歳および35歳)の者 ② 感染症法で結核に係る定期の健康診断の対象とされている施設等で働いている者 ③ じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている者 |
喀痰(かくたん)検査 | ① 胸部エックス線検査を省略された者 ② 胸部エックス線検査によって病変の発見されない者または胸部エックス線検査によって結核発病の恐れがないと診断された者 |
貧血検査 肝機能検査 血中脂質検査 血糖検査 心電図検査 |
35歳未満の者および36〜39歳の者 |
この「医師が必要でないと認める」とは、自覚症状及び他覚症状、既往歴等を勘案し、医師が総合的に判断することを指します。したがって、省略基準については、年齢等により機械的に決定されるものではありません。
Q3
育児休業等により休業中の社員も、定期健康診断を受診させる必要があるでしょうか。
育児休業等により休業中の社員も、定期健康診断を受診させる必要があるでしょうか。
実施する必要がありませんが、育児休業等から復帰後、すみやかに実施してください。
育児休業等で休業する社員については、厚生労働省の通達(育児休業等により休業中の労働者に係る健康診断の取扱いについて=平成4年3月13日基発115号)で以下のとおり、定められています。
事業者は、定期健診を実施すべき時期に、労働者が育児休業、療養等により休業中の場合には、定期健診を実施しなくても差し支えありません。
② 休業後の定期健康診断
事業者は、労働者が休業中のため定期健康診断を実施しなかった場合には、休業終了後、当該労働者に対し、すみやかに定期健診を実施しなければなりません。
通達に基づいて休業中の労働者の定期健診を取り扱うのであれば、休業に入る前に、定期健診の実施時期が復帰後である旨、適切に説明しておくとよいでしょう。
この他、月刊「企業実務」2016年6月号では、以下のQ4〜10の事項について解説しています。
Q4 ストレスチェックを定期健康診断と同時に実施することを検討しています。何か注意するべき点はありますか。
Q5 会社休日に定期健康診断を受診する場合、労働時間をどう取り扱えばよいでしょうか。
Q6 海外で長期勤務する社員に、定期健康診断を受診させる義務はあるでしょうか。
Q7 会社指定とは別の健診機関で社員が定期健康診断を受診した場合、その際の交通費は、会社が負担するのでしょうか。
Q8 定期健康診断の後、再検査・精密検査を行ったり、人間ドックを受診した場合、費用の負担はどうなるでしょうか。
Q9 社員の健康診断の結果について、職場内のどの程度まで共有すればよいでしょうか。
Q10 採用内定者に実施した健康診断で疾患があった場合、採用を見送ることはできますか。