新入社員の受入れ準備
4月に新入社員を迎え入れる企業では、次のような事務が必要です。
(1) 入社時に必要となる書類の準備……通勤経路・費用申請書、扶養控除等(異動)申告書、個人番号申告書など
(2) 入社後に支給・貸与する書類・備品の用意……身分証明書、就業規則・諸規程集、社章、机・事務用品、制服・作業服、名刺など
(3) 出勤簿(タイムカード)の調製
(4) 新入社員の氏名や略歴などを紹介した文書の配属先への配付
このほか、入社式や新入社員研修を実施する企業では、会場の場所や時間など、段取りの最終確認をします。
新入社員のなかに社員寮や社宅への入居希望者がいる場合は、3月中に入居できるよう手続きを進めます。
賃上げの検討
4月に定期昇給やベースアップを予定している企業では、賃上げに関する資料や情報を収集し、それらをもとに社員各人の人事評価も含めて具体的な数字の検討に入りましょう。
厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、2023年の中小企業(従業員数100~299名)の1人平均賃金の改定額は7,420円、改定率は2.9%でした。
本誌では、2024年の中小企業の賃上げ相場を予測しています。
社員の異動に伴う事務手続き
3月から4月は、人事異動の多い季節です。事務の引継ぎ事項をまとめ、異動者がスムーズに新しい仕事に取り組めるよう配慮しましょう。
同一職場内の異動の場合は、特に法定の手続きは必要ありませんが、住所地が変わる転勤が生じた場合は、さまざまな手続きが発生します。
たとえば、社会保険の資格喪失と取得の手続き(本社で健康保険と厚生年金保険の事務を一括して行なっている場合は不要)、雇用保険の「転勤届」の提出、「扶養控除等(異動)申告書」の提出先の変更、「給与支払報告書・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の旧住所地への通知などです。
このほか社内事務には、通勤手当や住宅手当の精算、貸与物品の返還、赴任先への勤務状況の連絡があります。
また、社員の家族に異動(子女の入学、卒業など)があれば、法定事務のほか、家族手当の変更、祝金の支給等も発生します。
社員の退職に伴う事務手続き
退職者が出た場合、必要に応じて「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」「雇用保険被保険者資格喪失届」「給与所得の源泉徴収票」「給与支払報告書・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」「離職証明書」などを作成(交付・提出)します。
また、退職金を支払う際には「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受け、「退職所得の源泉徴収票(特別徴収票)」を作成します。
退職者本人からは身分証明書や社章など身分を示すもの、健康保険被保険者証カードのほか、制服や個人管理している文書などの返却を受けます。
時間外労働の上限規制の適用
2024年4月より、時間外労働の上限規制が全業種に適用されます。
(1) 時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間です。
(2) 特別条項を適用する場合の時間外労働の上限は、
(ア) 年720時間以内
(イ) 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
(ウ) 時間外労働と休日労働の合計が、2~6か月の複数月の平均で1か月当たり80時間以内
(エ) 時間外労働が45時間を超えるのは年間6か月まで
となっています。
違反した場合には、罰則(6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦)が科されるおそれがあります。
労働条件明示事項の追加
2024年4月より、改正労働基準法施行規則などが適用され、労働条件明示事項が追加されます。
(1) すべての労働者について、労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に、「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要になります。
(2) 有期契約労働者について、有期労働契約の締結・更新時に「更新上限の有無と内容」が、無期転換申込権が発生する契約の更新ごとに「無期転換申込機会」「無期転換後の労働条件」の明示が必要になります。