
退職する社員との仕事の引き継ぎがなかなか進みません。会社が希望退職日を先送りする形で変更することはできるのでしょうか。
合意退職の場合、従業員の合意が得られれば、退職時期を延長することは可能です。
退職届による辞職の場合には、退職時期を延長したり先送りしたりはできません。
高野メリヤス事件(昭51・10・29東京地裁判決)では、労働者の同意の有無にかかわらず退職時期の延長はできないとしています。
会社としては代替要員が確保できずに困ることもあるでしょうが、労働者から辞職の意思表示をされての退職の場合であれば、手のうちようがありません。
そのため、退職時期をずらすには辞職ではなく、合意退職を選択してもらう必要があります。
この場合、就業規則の合意退職の規定をもとに対応することとなります。その従業員の合意を取得することができれば、退職時期の延長は可能と考えます。
この違いについては、就業規則の規定にわかりやすく定めておくことも、トラブル防止につながります。
■退職届(願)の撤回に関する就業規則の定め方
第○条(辞職)
従業員は、退職届を提出することで、会社の承諾がない場合には、民法第627条の手続きで、労働契約を終了させることができる。
辞職については退職届の受理の時点から撤回はできない。
第□条(合意退職)
1. 従業員が退職希望日の○日以上前に所属長に退職願の届出をした場合、原則として会社はその申込みを承諾する。
2. 第1項の会社の承諾するまでの期間においては、従業員は合意退職の申込みの撤回をすることができる。
3. 第1項で決定された退職日は、新たにその従業員と会社とで合意がない限り変更することはないものとする。
なお、労使での合意ということで、一方的に会社が退職日を指示したり決定したりすることは避けてください。
会社が退職日を指定することは、退職ではなく、解雇とみなされることもあります。
合意退職では、労使双方の退職日の意思の一致が重要となるので、話し合いによって決定し、その話し合いの記録も書面で残すようにします。
※本記事は、月刊「企業実務」(2014年2月号)に掲載した「退職願(届)の受理・撤回等に関する労務問題Q&A」を企業実務オンライン用に再構成したものです。