6月でも遅い?73%の企業が経団連の方針を「遵守しない」と回答
2015年流行語大賞の候補ともなった「オワハラ」。これは「就活終われハラスメント」の略で、企業が学生に対し、内定を出す代わりに就活を終わることを強要する行為をいう。
もっとも、優秀な学生を囲い込もうとする企業は以前からあった。良いか悪いかは別にして、そのこと自体は珍しいことではない。
しかし2015年は、経団連加盟企業が2016年度新卒者の選考時期を8月に後ろ倒しした影響で、先に採用を終えた中堅企業などが学生からの内定辞退を警戒し、例年以上に強引なオワハラ行為が横行したという事情がある。
実態としては多くの企業が8月より前に採用活動を開始しており、結局のところ、学生にとっては例年以上に就職活動が長期化する結果になった。
その反省を踏まえ、経団連は2017年度の新卒者採用の選考解禁を6月にする方針を発表した。
ところが、株式会社ネオキャリア(本社・東京)が、運営する新卒採用担当者向け情報サイト「新卒WATCH」上でアンケート調査したところ、73%の企業の採用担当者が「経団連の方針を遵守しない」と答えている(「2017年度採用スケジュール変更に関するアンケート調査」より)。
同調査では、「選考解禁は、何月がベストだと思うか?」という問いに対し、「4月」と答えた採用担当者が最も多く47%。次いで「3月以前」14%、「通年採用」12%という結果だった。
7割近い大学・短大が「企業からのハラスメント」相談を受ける
少子化で労働人口の先細りが予想される中、企業の採用担当者が若くて優秀な人材を採用しようと努力するのは当たり前である。しかし、その行為が学生にとって「ハラスメント」と受け取られるようだと問題だ。
文部科学省が7月に発表した「平成27年度就職・採用活動時期の変更に関する調査(7月1日現在)」では、オワハラの実態が報告されている。
学生等の意思に反して就職活動の終了を強要するようなハラスメント的行為について、「相談を受けたことがある」大学・短期大学は、平成27年3月卒業・修了者のときは45.1%だったのに対して、平成28年3月卒業・終了予定者(3月から6月までの4か月間)は68.3%と急増した。
以下は、その相談内容の具体例である。
- 面接を受けているその場で、内々定を出す代わりに、他企業へ断りの電話をかけるよう強要された。
- 他社への就職活動を取りやめないと内々定を出せないといわれた。
- 内定辞退の希望を示唆したところ、長時間(長期間)にわたって説得され精神的に参ってしまった。
- 長時間にわたり拘束され、他社の選考を受けられなくなった。
- 8月1日の解禁に合わせて、内定者向け合宿への参加を義務づけられた。
- 内定を出した後、就活を継続していることがわかった時点で内定を取り消すと警告された。
オワハラは職場のパワハラに通じる…?
労使トラブルにくわしい特定社会保険労務士の長沢有紀氏は、
「熱心なあまり、企業側としてはよかれと思ってしたことが、学生にはハラスメントと受け止められることもあります。もしも相談内容のようなハラスメント行為に心当たりがあれば、自社の採用体制だけでなく、企業体質についても冷静に見直してみることが大切でしょう」
とアドバイスする。
学生の気持ちや都合を考えないオワハラは、社員へのハラスメントに通じるものがある。
「会社の都合を押し付け、強引にいうことを聞かせようとする」「逆らう相手には罰を与えようとする」——。
貴重な経営資源であり、財産であるはずの「人」をその会社はどのように扱っているのか。オワハラ行為からは、「人」に対するその組織の本音が垣間見えはしまいか。