多様な働き方が推奨されるなか、フリーランスを含む個人事業者(以下、本稿では「フリーランス」とします)という働き方を選ぶ人も増えています。しかしフリーランスは、労働安全衛生法の対象ではないため、必要な安全対策や教育が受けられないことが問題となっています。
この問題に対し、「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」は、これまでの論点を整理した報告書案をまとめました。
報告書案では、従来、雇用された労働者を主たる保護対象としてきた労働安全衛生関係法令の枠組みを活用することを提唱しています。雇用労働者と同じ場所で就業し、または類似の作業を行なうフリーランスの安全衛生の確保について、フリーランス自身はもとより、就業場所を管理する者や仕事の注文者など、フリーランスを取り巻く関係者が講ずべき措置を次のように整理しました。
(1) フリーランスの業務上の災害の把握等
死亡するか4日以上休業する怪我をした場合については、労働基準監督署への報告を義務づけることなどが示されています。
(2) フリーランスの危険有害作業に係る災害を防止するための対策
安全衛生に関する講習や教育について雇用労働者と同様に義務づけることのほか、発注者だけでなく、機械等貸与者等の講ずべき措置等の対象の見直しなどが示されています。
(3) フリーランスの過重労働、メンタルヘルス、健康確保等の対策
年1回の定期健康診断や、医師による面接指導の機会を設けることなどが示されています。
報告書案において制度や仕組みを見直すことや取組みを進めることが適当とされた事項については、厚生労働省において、速やかに必要な法令改正、予算措置等を行なうべきとしています。
また同報告書案では、今後の検討を進めるにあたっての、検討の基礎となる災害の実態の深掘りなどの論点も示されています。
厚生労働省は最終的な報告書をふまえて、労働安全衛生法等の改正手続きを進める予定です。