種苗法の改正が継続審議となっています。
近年、わが国の優良品種が海外に流出して他国で増産され、第三国に輸出されるなどの事態が生じています。そこで、登録品種を育成者権者の意思に応じて海外流出の防止等の措置ができるようにするとともに、育成者権を活用しやすい権利とするため、品種登録制度の見直しを図ること、などが改正の目的です。
改正法案のポイントは、次のようなものです。
育成者権が及ばない範囲の特例の創設
登録品種の種苗等が譲渡された後であっても、当該種苗等を育成者の意図しない国へ輸出する行為や、意図しない地域で栽培する行為について、育成者権を及ぼせるよう特例が設けられます。
これにより、海外へ持ち出されることを知りながら種苗等を譲渡した者も刑事罰等の対象とすることが可能になります。
輸出・栽培地域に係る制限の内容は農水省のホームページで公表され、登録品種である旨および制限がある旨の表示も義務づけられます。
自家増殖の見直し
育成者権の効力が及ぶ範囲の例外規定である、農業者が登録品種の収穫物の一部を次期収穫物の生産のために当該登録品種の種苗として用いる自家増殖は、育成者権者の許諾に基づき行なうこととされます。
質の高い品種登録審査を実施するための措置
審査内容の充実のため、出願者から審査の実費相当額が徴収されるとともに、出願料および登録料の水準が引き下げられます。
育成者権を活用しやすくするための措置
品種登録簿に記載された特性(特性表)と被疑侵害品種の特性を比較することで、両者の特性が同一であることを推定する制度を設け、権利侵害の立証を行ないやすくするとしています。
育成者が特性表の補正を請求できる制度、裁判での証拠等に活用できるよう育成者権が及ぶ品種か否かを農林水産大臣が判定する制度が設けられます。
その他
特許法にならって職務育成品種規定の充実等の措置が講じられます。また、指定種苗制度について、指定種苗の販売時の表示のあり方を明確化する措置が講じられます。
中国や韓国の種苗関連の販売サイトに日本で開発されたイチゴやブドウなど36品種の掲載が確認されるなど、日本のブランドを支える育成者権を保護するための法整備が急務といえます。こうした状況を受けて、野上浩太郎農林水産大臣は、改正種苗法案について早急に成立させる必要があると述べ、法改正への強い意欲を示しています。