このほど、「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」の報告書が公表されました。
そこで打ち出されているのが、消費者の脆弱性につけ込んで不当な利益を追求する悪質商法への厳正な対処です。
以下、報告書の主な内容についてみていきます。
販売を伴う預託等取引契約を原則禁止に
販売を伴う預託等取引契約については、販売代金の支払いという形式で消費者から事実上の金銭の出捐を十分な認識のないままに、元本保証または類似するものと誤解させた状況で契約を行なわせるとともに、新規の契約者への物品の販売代金によっていわゆる配当を既存の契約者に一時的に支払うことが可能です。
また、売買の対象となる物品が存在しない、または存在しなくなったことが発覚しづらいことなどから、消費者に深刻かつ甚大な財産被害を及ぼすおそれが高い反社会性のある行為というべき、とまで報告書はその悪質性を断じています。
そこで、こうした取引契約は預託法において原則禁止とする前提で、禁止の対象となる範囲の明確化を実務的に検討すべきとしています。
当該禁止に違反する事業者に対し、十分な抑止力をもった法定刑を設けるとともに、締結された契約については民事上無効とすることが必要だとしています。
また、特定商品の預託を規律する現行の預託法については、特定商品制の撤廃、勧誘規制の強化、広告規制の新設など、預託法制定以来となる抜本的な見直しを求めています。
消費者被害の拡大防止等を図る特定商取引法の罰則強化
特定商取引法に基づく行政処分の実施にあたっては、専門的または複雑な事項が多く、違反行為の立証に時間を要する事案がみられます。
そこで、合理的な根拠を示す資料の提出および当該資料が提出されない場合、行政処分の適用に係る違反行為が行なわれたものとみなす規定の対象となる行為を拡大すべきであるとしています。
また、特定商取引法における不実告知等の禁止の規定に違反した場合について、詐欺罪等の法定刑も勘案しながら、違法収益の没収も可能となるレベルへの罰則の引上げを検討すべきとしています。
このほか、経済のデジタル化・国際化に対応したルール・環境整備等について、「詐欺的な定期購入商法」に対する規制強化、デジタル・プラットフォームを経由した取引等について特定商取引法の見直しを含めた所要の方策の検討、国際化への対応としての外国当局との執行協力の取組みと制度的な措置を講じることなどが提案されています。
消費者庁はこれらをふまえて預託法等の改正案を作成し、来年の通常国会に提出する予定です。