企業実務オンライン > ニュース > これからの法改正の動き > 発信者情報開示のための新たな裁判手続きの創設を検討

これからの法改正の動き

発信者情報開示のための新たな裁判手続きの創設を検討

[ 2020年9月号 月刊「企業実務」編集部 ]

pc

 違法・有害な情報の流通、著作権を侵害する悪質な海賊版サイトの台頭や、SNS上での誹謗中傷等の深刻化など、インターネットでは様々な権利侵害に関する被害が発生しています。

 匿名の発信者による投稿に関して被害を受けた者は、被害回復のため、プロバイダ責任制限法における発信者情報開示請求により発信者を特定し、損害賠償請求等を行なうことが考えられます。しかし、現在の発信者情報開示制度では円滑な被害者救済が図られない、あるいは企業等の批判封じの方法として発信者情報開示請求が行なわれるなど制度が悪用されている、といった問題が指摘されています。

 総務省の発信者情報開示の在り方に関する研究会が、プロバイダ責任制限法における発信者情報開示の在り方等についての「中間とりまとめ(案)」を公表し、意見公募手続きを行なっています。

 そのなかで、発信者情報の開示対象の拡大等とあわせて、新たな裁判手続きの創設の検討が提言されています。

求められる手続きの負担緩和

 現在、発信者情報開示の場面で、問題となる投稿が権利侵害に該当するか否かの判断が困難なケースなどにおいては、一般的に、

①コンテンツプロバイダに対する発信者情報開示仮処分申立て
②アクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求訴訟
③特定された発信者への損害賠償請求訴訟

という、3段階の手続きが求められます。

 この手続きが被害者にとって過大な負担となっており、途中で権利回復を断念せざるを得ないことがあるのが実情です。

 開示請求を受けたプロバイダ側の裁判上の請求対応の負担増も課題になっています。

非訟手続きの導入

 そこで、中間とりまとめ(案)では、1つの手続きで発信者を特定することができるプロセスなど、より円滑な被害者の権利回復を可能とする裁判手続きの実現を図る必要があるとしています。

 たとえば法改正により、発信者情報開示請求権という実体法上の請求権に基づく開示制度に代えて、非訟手続き等として、被害者からの申立てにより、裁判所が発信者情報の開示の適否を判断・決定する仕組みを設ける案が示されています。

 新たな仕組みの検討に当たっては、発信者情報開示の在り方に照らして、非訟手続きとした場合の利点と課題について整理し、「新たな手続きにおける当事者構造と発信者の手続き保障」「開示要件等」「その他(手続きの濫用の防止等)」を踏まえて議論を深めていくことが適当であるとしています。

 総務省は、パブリックコメントの結果をふまえて中間とりまとめを策定し、制度の改善を進めていく予定です。

月刊企業実務購読のご案内

最大19%OFF!! Fujisan.co.jpでお得にお求めいただけます!

購読のご案内

月刊『企業実務』ご購読はこちら

関連記事


企業の総務・人事・経理部門を全力サポート!
↓↓↓
【企業実務サポートクラブ】

≫ 企業実務サポートクラブ


新着記事
アクセスランキング
女性活躍推進特集
当社は、
Women Will の取り組みを応援しています。