法務省出入国在留管理庁は有識者による「収容・送還に関する専門部会」を設置し、同専門部会が報告書「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」をとりまとめました。
この報告書では、「送還を促進するための措置の在り方」について、次の項目が提言されています。
(1)本人の事情を適切に把握するための措置等
退去強制令書の発付の判断に当たり、本人の事情を適切に考慮するための手続きの充実・改善および在留特別許可の考慮要素・基準の一層の明確化の検討等。
(2)自発的な出国を促すための措置
退去強制令書が発付された外国人が早期の出国に応じる場合、その者の在留状況、家族関係等を考慮し、次回入国に際し、現行の上陸拒否期間より早期の上陸・在留を可能とする仕組みの制度化の検討等。
(3)本邦から退去しない行為に対する罰則の創設
被退去強制者に渡航文書の発給申請等や本邦からの退去を命ずる制度および命令違反に対する罰則の創設の検討。
(4)送還の回避を目的とする難民認定申請に対処するための措置
送還停止効に一定の例外を設けること、再度の難民認定申請における審査手続きの合理化・効率化の検討。
難民該当性の認定基準の明確化等、2014年の難民認定制度に関する専門部会の提言を踏まえた施策の実施等。
一方、「収容の在り方」については、次の項目が提言されています。
(1)収容期間の上限、収容についての司法による審査
一定期間を超えて収容を継続する場合にその要否を吟味する仕組みの創設、行政訴訟の機会のより適切な教示、行政手続きの一層の適正確保を図るための有効な方策の検討等。
(2)被収容者の処遇
常勤医師の確保等のための具体的措置および治療拒否者に必要な医療上の措置をとるための措置を講じること。
特に配慮が必要な被収容者の処遇の在り方等についての不断の検討、見直し等。
(3)仮放免その他収容の長期化を防止するための措置(逃亡等の行為に対する罰則等)
仮放免の要件・基準の一層の明確化および仮放免を不許可とする場合のより具体的な理由の告知の検討。
被退去強制者について、第三者の支援または補助等により、送還の実施を担保するために逃亡防止等を図りつつ、収容施設外で起居することを認める措置 (収容代替措置)の導入の検討。
仮放免された者の逃亡等の行為に対する罰則の創設や、収容代替措置を導入する場合の実効的な逃亡防止措置(罰則を含む)等の検討等。
この提言を受け、法務省は出入国管理法の改正も含めた制度の見直しを進めることになります。
ただし、施設の劣悪な環境が問題になっているなか、提言が人権への配慮を強く訴える一方で、罰則の創設のような方針が打ち出されたことについては反発も予想されます。