近年、大手企業による不正会計事案が相次ぎ、監査の信頼性が問われている状況にあります。
その信頼性を回復し、確保するための取組みの1つとして、財務諸表等での監査に関する情報提供をより充実させる必要性が指摘されていました。
金融庁の企業会計審議会では、このほど、監査基準の改訂の草案を提示しました。
ポイントは、以下のとおりです。
(1)「主要な監査上の検討事項」について
監査プロセスの透明性を向上させることを目的に、監査人が当年度の財務諸表の監査において特に重要であると判断した事項(主要な監査上の検討事項)を記載することとなります。
①「主要な監査上の検討事項」の決定
監査人は監査役等と協議した事項のなかから、
・特別な検討を要するリスクがある事項、または重要な虚偽表示のリスクが高いと評価された事項
・見積りの不確実性が高いと識別された事項を含め、経営者の重要な判断を伴う事項に対する監査人の判断の程度
・当年度に発生した重要な事象、または取引が監査に与える影響
等について考慮したうえで特に注意を払った事項を決定します。
②「主要な監査上の検討事項」の記載
「主要な監査上の検討事項」の内容、その決定理由、監査における監査人の対応等について記載します。
(2)その他の改訂事項について
国際的な監査基準との整合性を確保する観点から、次の監査基準が見直されることとなります。
①監査報告書の記載区分等
監査人の意見を監査報告書の冒頭に記載し、新たに意見の根拠区分が設けられました。
②継続企業の前提に関する事項
継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合は、独立した区分を設けて継続企業の前提に関する事項を記載します。
(3)実施時期等
「主要な監査上の検討事項」の記載は2021年3月決算に係る財務諸表の監査から適用されます。
また、「主要な監査上の検討事項」の適用範囲等については、関係法令で整備される予定です。