法務省の有識者研究会は、株式会社を設立する際、反社会的勢力を排除する対策を本格化させることについて、とりまとめを公表しました。
背景となる国内外の情勢
日本では取引主体が株式会社であることにより社会的信用が高まる一方、その点が悪用され、消費者詐欺犯罪、詐欺的投資勧誘や資金洗浄等の犯行ツールとして株式会社が使用されることが少なくありません。
また、株式会社を使用した詐欺的な事例においては、暴力団等反社会的勢力が法人の実質的支配者になっていることが多く、その資金源になることもあります。
規制強化に向けた対策
(1) 公証人法施行規則に規定を設けることによる措置
公証人は、定款認証手続きにおいて嘱託人に対し、実質的支配者となる者の申告、実質的支配者が反社会的勢力に該当しないことの申告を求め、その内容を認証文に記載します。嘱託人が正当な理由なく申告を拒んだ場合には、公証人は定款認証の嘱託を拒否します。
(2) 実質的支配者の本人確認
定款認証の嘱託の内容が、一定のリスク指標に該当する場合には、公証人は、申告された実質的支配者の本人確認を行ないます。
リスク指標としては、実質的支配者の住所がFATF(金融活動作業部会)のハイリスク国に指定されている国、などが考えられます。
(3)実質的支配者が反社会的勢力に属するか否かの裏付調査
申告された実質的支配者が反社会的勢力に該当しないことの申告に関して、第一次的に公証人が収集した情報に基づき該当するか否かの判断を行なったうえで該当するとの判断がされた場合、警察との連携が可能であれば二次的に警察に照会する仕組みを構築します。
これにより、会社の実質的支配者等の申告の信頼性の向上を図る考えです。
情報のデータベース化
電子公証システムを利用して、設立される会社の実質的支配者等の申告に関する情報をデータベース化します。警察等の公的機関による照会があった場合は、当該データを効率的に提供します。
今後は、パブリックコメント(意見公募)を経て、法務省令を改正し、年内にも施行する方針です。