長時間労働の是正は、労働の質が高まり生産性の向上につながるとともに、働く人々の健康確保や仕事と家庭の両立を可能とするものです。そのため、時間外労働の規制の強化は、働く人々が幸せな生活を送るうえで重要な課題でもあります。
仕事と生活の調和を目指して
9月9日には、政府が提唱する「働き方改革」の一環として、第1回目の「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」が開かれました。
同検討会でテーマとされるのは、次のとおりです。
- 36協定上の延長時間、実際の時間外労働実績などの実態や課題の把握
- 諸外国における労働時間制度の現状と運用状況
- 健康で仕事と生活の調和がとれた働き方を実現するための方策
このうち、焦点となっているのが36協定上の延長時間について上限を設けるか否かです。
時間外労働は、事実上青天井
現在の労働基準法の規定では、労使の合意に基づいて36協定を締結すれば、「1日8時間、1週40時間」という法定労働時間の限度を超えて働かせることが可能です。
法定労働時間を超える労働時間については「1か月45時間、1年間360時間」といった基準はありますが、労使で特別条項付き協定を結べば、さらにこの基準を超えて働かせることができます。
この特別条項については、本来は一時的・臨時的に認められるものですが、実際には過労死の労災認定基準(1か月80時間)を超える時間の協定が結ばれ、長時間労働が恒常的に行なわれているケースも少なくないようです。
上限検討に向けた課題
36協定は基本的に労使が合意しているはずなのに実際に長時間労働が行なわれているのは36協定のシステムに問題があるのではないか、また、時間外労働の上限を示すことで、かえって長時間労働を助長することにもつながるのではないか、といった意見もあります。
同検討会では、年内に論点整理を終え、報告書をまとめるとしています。