消費者被害の防止・救済を目的とする法改正がありました。その主な改正内容をみていきます。
消費者契約法の改正
消費者契約をとりまく環境変化をふまえつつ、平成30年改正時の附帯決議に対応し、消費者が安全・安心に取引できるセーフティネットを整備します。
・契約の取消権の追加
次のケースについて、契約の取消権が追加されます。
・勧誘することを告げずに、退去困難な場所へ同行し勧誘
・威迫する言動を交え、相談の連絡を妨害
・契約前に目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難にする
・解約料の説明の努力義務
消費者に解約料の算定根拠の概要を説明すること、適格消費者団体に営業秘密を除く算定根拠を説明することを努力義務とします。
・免責の範囲が不明確な条項の無効
賠償請求を困難にする不明確な一部免責条項(軽過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないもの)は無効とされます。
・事業者の努力義務の拡充
事業者に対して、契約締結時だけでなく契約解除時にも解除行使権に必要な情報提供を行なう、勧誘時には消費者の知識・経験に加え、年齢・心身の状態も総合的に考慮した情報提供を行なう等、努力義務が拡充されます。
消費者裁判手続特例法の改正
消費者の被害を救済しやすく、利用しやすい制度へと進化させるとともに、制度を担う団体が活動しやすくする環境整備を行ないます。
・対象範囲の拡大
消費者裁判の対象となる損害に「一定の慰謝料」(基礎的事実関係が共通で、(1)財産的損害と併せて請求の場合、(2)故意による場合)を追加します。
また、対象となる被告に「事業者以外の個人」を追加します。これは悪質商法に関与した事業監督者・被用者を想定しています。
・和解の早期柔軟化
消費者裁判手続きは共通義務確認訴訟、簡易確定手続等の2段階で進められます。
その1段階目(共通義務確認訴訟)で、解決金を支払う和解、金銭を支払う以外の和解、総額和解、消費者への支払いまで完結する和解等、様々な和解が可能になります。
・消費者への情報提供方法の充実
事業者に消費者への個別通知を義務付ける、消費者の氏名等の情報開示を早期に可能にする、特定適格消費者団体からの通知を簡潔にすること等で、消費者への情報提供方法を充実させます。
・特定適格消費者団体の負担軽減
特定適格消費者団体を支援する法人(消費者団体訴訟等支援法人)を認定する制度を導入し、特定適格消費者団体の負担軽減を図ります。
この法律は一部の規定を除き、公布の日から起算して1年を経過した日から施行されます。