下請中小企業振興法では、「下請事業者及び親事業者のよるべき一般的な基準」(振興基準)を経済産業大臣が定めることとしています。
振興基準は、下請取引における下請事業者の事業運営の方向性や親事業者が行なう発注等のあり方を具体的に示し、下請取引で問題となり得る行為について注意喚起するものとなっています。
このたび、平成28年に公表された「未来志向型の取引慣行に向けて」の重点5課題への対応等を通じた、さらなる下請中小企業の振興を目的に、振興基準が改正されました。
今回の改正のポイントは、次の4点です。
1 知的財産の取扱い
ことし3月31日に公表された「知的財産取引に関するガイドライン」に基づき取引を行なうものとされます。その際、取引条件の明確化のため、ガイドラインとあわせて作成された「契約書ひな形」を活用するものとされます。
2 手形等の支払サイトの短縮化および割引料負担の改善
手形等の支払サイトについて、60日以内とするよう努めることとされます。
また、割引料等のコストについて、親事業者と下請事業者が具体的に検討できるよう、下請代金の額と分けて明示することとされます。
3 フリーランスとの取引
下請事業者たるフリーランスとの取引でも、発注時の取引条件を明確にする書面等の交付を行なうなど、ことし3月26日に公表された「フリーランスとして安心して働ける環境 を整備するためのガイドライン(内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省)」を踏まえた適切な取引を行なうものとされます。
4 親事業者に対する協議を下請事業者から申し出やすい環境の整備
親事業者に対する協議を申し出やすい環境の整備のため、年に1回の価格交渉等の下請事業者による定期的な協議の申出があった場合には、これに応じるものとされます。
なお、公正取引委員会と中小企業庁は、繊維業90日・その他の業種120日を超える長期の手形について、割引困難な手形に該当するおそれがあるとして指導の対象としてきましたが、今後、おおむね3年以内を目途に当該期間を60日とする見直しの検討が行なわれます。
その他の新法令・通達
中退共の運用利回り改定
建設業に係る特定業種退職金共済契約による退職金額の予定運用利回りが年率1.3%になりました。
(令和3・5・6政令第151号=中小企業退職金共済法施行令の一部を改正する政令)
災害対策の見直し
災害時に円滑・迅速な避難の確保ができるよう、「避難勧告」と「避難指示(緊急)」が「避難指示」に1本化されました。
(令和3・5・10法律第30号=災害対策基本法等の一部を改正する法律ほか)
デジタル社会への対応
デジタル社会の形成に関する施策を推進するための基本理念や基本方針、重点計画等の作成およびデジタル庁の設置について定めた新法が成立しました。
(令和3・5・19法律第35号=デジタル社会形成基本法 ほか)
特許法のデジタル化対応
デジタル・リモート・非接触など経済活動のあり方の変化に対応する特許等の手続きの整備、権利保護の見直し等が行なわれています。
(令和3・5・21法律第42号=特許法等の一部を改正する法律)
「特定少年」を厳罰化
少年法に18、19歳を特定少年と位置づけ、成年同様の刑事手続きをとる対象犯罪が拡大されます。
(令和3・5・28法律第47号=少年法等の一部を改正する法律)
長期優良住宅認定制度の拡大
管理組合が住棟単位で長期優良住宅建築等計画の認定を受けられる制度の導入などが行なわれています。
(令和3・5・28法律第48号=住宅の質の向上及び円滑な取引環境の整備のための長期優良住宅の普及の促進に関する法律等の一部を改正する法律)