出資・経営・労働を三位一体にした「労働者協同組合」という新たな法人形態が法制化されました。
労働者協同組合とは、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行なわれ、組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織です。ワーカーズコープとも呼ばれます。
持続可能社会に向けての期待
訪問介護や学童保育、農作物の共同販売など、地域に貢献し、地域課題を解決するための活動をする組織が広がりをみせています。
しかし、そうした組織を運営していくうえで、企業組合は営利性が求められること、NP0法人は出資ができないことなど、これまでの法人形態では不都合が生じていました。
そこで、そうした非営利の法人を簡便に設立できる制度を設けて、多様な就労機会の創出や地域の需要に応じた事業の実施につなげ、持続可能で活力ある地域社会の実現に寄与しよう、というのが法制化のねらいです。
組合員は労働法に守られる
労働者協同組合法のポイントは、次のとおりです。
・組合の基本原理に基づき、組合員は加入に際し出資をし、組合の事業に従事する者とする
・出資配当は認めない(非営利性)。剰余金の配当は、従事分量による
・組合は、組合員と労働契約を締結する(組合による労働法規の遵守)
・その他、定款、役員等(理事、監事・組合員監査会)、総会、行政庁による監督、企業組合またはNPO法人からの組織変更、検討条項(施行後5年)等に関する規定を置く
設立については準則主義をとり、3人以上の発起人がいれば届出のみで設立できるようにします。
この法律は、一部の規定を除いて公布後2年以内の政令で定める日から施行されます。
その他の新法令・通達
労働安全衛生の規制対象拡大
橋梁等の塗装の剥離剤などに使われているベンジルアルコールがラベル表示・安全データシート交付等の義務対象物質に追加されました。
(令和2・12・2政令第340号=労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令)
災害対策としての交通機能維持
大規模災害が発生した場合でも交通機能を維持するための基本法が一括して改正されています。
その一環として、国が運輸事業等の発展のために行なう施策に人材の確保(これに必要な労働条件の改善を含む)の支援が追加されています。
(令和2・12・9法律第73号=交通政策基本法及び強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法の一部を改正する法律)
改正種苗法が成立
育成者権者の保護を目的とした改正種苗法が成立しました。
登録品種について育成者権者の意思に応じて海外流出の防止等の措置ができるようにするとともに、育成者権を活用しやすい権利とするため、品種登録制度の見直しが行なわれています。
(令和2・12・9法律第74号=種苗法の一部を改正する法律)
生殖補助医療を推進
人工授精などの生殖補助医療によって出生した子の親子関係に関する民法の特例が規定されました。
(令和2・12・11法律第76号=生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律)
密漁水産物の流通規制
違法漁獲物の流通防止のための届出制や輸入規制についての整備が行なわれています。
(令和2・12・11法律第79号=特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律)
多様な決済手段の安全を守る
少額の分割後払いサービスの限度額の上限を10万円に設定し、契約解除等の催告に係る期間を7日とするなど、安全・安心に多様な決済手段を利用できる環境が整備されることとなりました。
(令和2・12・16政令第351号=割賦販売法施行令の一部を改正する政令ほか)