日本では高齢化が進み、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたって多様な形で働くようになることが見込まれています。
そのような今後の社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図ることを目的とする「年金制度改正法」が成立しました。
今回の改正の内容は多岐にわたりますが、ここでは中小企業に特に影響の大きいポイントをピックアップします。
被用者保険の適用拡大
現在、短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の規模要件は500人超とされています。
この要件が2022年10月に「100人超」に、2024年10月に「50人超」に段階的に引き下げられます。
また、現行「1年以上」とされている勤務期間要件が撤廃され、短時間労働者についてもフルタイムの被保険者と同様の2か月超の要件が適用されます。
加えて、5人以上の個人事務所の適用業種に弁護士等の士業が追加されます。
在職中の年金受給のあり方について見直し
「在職定時改定」が導入されます。これは、65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者の年金額について、毎年定時に改定し、就労を継続したことの効果を早期に年金額に反映させて、在職受給権者の経済基盤の充実を図ろうとするものです。
また、60~64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、支給停止とならない範囲が現行の28万円から「47万円」に拡大されます。
受給開始時期の選択肢の拡大
年金の受給開始時期について、現在は60歳から70歳の間で自分で選択することが可能です。その受給開始時期の選択肢が、60歳から75歳の間に拡大されます。
確定拠出年金の加入可能要件の見直し
企業型DC の加入可能年齢が「70歳未満」へ、iDeCo の加入可能年齢が「65歳未満」へと引き上げられるとともに、受給開始時期等の選択肢が拡大されます。
確定拠出年金における中小企業向け制度(簡易型DC・iDeCo プラス)の対象範囲が100人以下から「300人以下」へ拡大されるなど、制度面・手続き面の改善が図られます。
本改正法は、一部を除いて2022年4月1日に施行されます。
その他の新法令・通達
スーパーシティ構想の推進
AIなどの先端技術を活用し、未来の暮らしを先行実現しようという「スーパーシティ」構想を実現するためのデータ連携基盤の整備促進などが国家戦略特別区域法に盛り込まれています。
(令和2・6・3法律第34号=国家戦略特別区域法の一部を改正する法律)
ネット社会の透明性確保
巨大IT企業に、契約条件の開示や変更時の事前通知等を義務づける新法が制定されました。
(令和2・6・3法律第38号=特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律)
個人情報保護の見直し
利用停止・消去等の個人の請求権の要件緩和など、保護と利活用のバランス等を勘案した個人情報保護法の改正が行なわれています。
(令和2・6・12法律第44号=個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律)
海賊版対策を拡大
違法ダウンロードの規制対象を全著作物に広げるなどネット上の海賊版対策強化が図られています。
(令和2・6・12法律第48号=著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律)
粉じん規制の強化
ずい道等の建設の作業を行なう坑内作業場について、空気中の粉じんの濃度等の測定等が事業者に義務づけられました。
(令和2・6・15=厚生労働省令第128号=粉じん障害防止規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令)