経済のグローバル化に伴い、国境を越える取引が恒常的に行なわれ、企業や個人の海外取引や海外資産の運用形態等が多様化しています。
そんななか問題になっているのが、多国籍企業の活動実態と各国の税制や国際課税ルールとの間のずれを利用することで、多国籍企業がその課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行なっていること(BEPS :Base Erosion and Profit Shifting=税源浸食及び利益移転)です。
それを受けて、近年、OECDおよびG20において、これらの課税逃れに対処するための国際協力の機運が一層高まってきています。
わが国でも、これまでOECDおよびG20が推進してきたBEPSプロジェクト等、この問題への対応に各国と連携しながら取り組んできていました。そのBEPSプロジェクトをさらに推進すべく現在82か国・地域が署名する「税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約」(BEPS防止措置実施条約)が発効されることとなりました。
条約の目的
BEPSプロジェクトにおいて策定されたBEPS防止措置のうち租税条約に関連する措置を、本条約の締約国間の既存の租税条約に導入することを目的としています。
この条約により、租税条約に関するBEPS防止措置を、多数の既存の租税条約について同時かつ効率的に実施することができます(図)。
この条約で導入が可能になるBEPS防止措置は次のものです。
租税条約の濫用等を通じた租税回避行為の防止に関する措置
①租税条約の特典(投資所得に対する源泉地国における課税の減免規定等)の濫用の防止規定を設けること
②進出先国における事業拠点が恒久的施設と認定されることを人為的に回避するという租税回避行為に有効に対処するための規定を設けること
二重課税の排除等納税者にとっての不確実性排除に関する措置
租税条約に関連する紛争を解決するための相互協議手続をより実効的なものとすること
この条約の発効日は、2019年1月1日です。