石綿(アスベスト)は、過去に建築資材として広く使用されていましたが、その後、空中に飛散した石綿繊維を長期間大量に吸入すると肺癌や中皮腫の誘因となることが判明しました。現在、建築物の解体等工事などによる石綿ばく露により、毎年約1,000人(うち建設業500人強)もの人が労災認定されています。
こうした石綿建材を使用する建築物の解体棟数は、2030年頃のピークに向けて増加していく見通しで、今後の解体等工事における労働者の石綿ばく露防止の徹底が求められています。
そこで、石綿の使用状況を的確に把握する事前調査・分析の精度向上を図るため、「労働安全衛生法施行令」と「石綿障害予防規則等」の一部が改正されました。
その主な改正内容は、次のとおりです。
製造・輸入・譲渡・提供・使用が禁止される石綿の見直し
次の①~③に掲げるもので、厚生労働省令で定めるものおよびこれらをその重量の0.1%を超えて含有する製剤その他の物(以下、「石綿分析用試料等」といいます)を、製造等が禁止される物質から除外することとされました。
①石綿の分析のための試料の用に供される石綿
②石綿の使用状況の調査に関する知識または技能の習得のための教育の用に供される石綿
③①または②の原料または材料として使用される石綿
石綿分析用試料等の製造が厚生労働大臣の許可の対象に
上記の①~③の石綿分析用試料等を製造する場合には、厚生労働大臣の許可を受けなければならないこととされました。
製造可能な石綿分析用試料等の要件・基準の設置
(1)石綿分析用試料等として製造等が認められる要件が、次のとおり定められました。
・製造・輸入・使用……所轄の労働基準監督署長への事前の届出
・譲渡・提供……当該石綿を堅固な容器に入れる等の措置
(2) 石綿分析用試料等の製造設備や製造者等に関する製造許可基準が定められました。
局所排気装置等の設置基準を緩和
石綿の分析作業に労働者を従事させる場合において、局所排気装置等の排気口を屋内に設けられることとし、その際に排気口から石綿粉じんが排出することを防止する措置を講じることが義務付けられました。
この政令・省令の施行日は、平成30年6月1日です。
その他の新法令・通達
高年齢者雇用状況報告書の様式を改定
7月15日を提出期限として、事業主には、毎年、高年齢者の雇用に関する状況を報告することが義務付けられています。その報告書(高年齢者雇用状況報告書)の様式第2号が改められました。
(平成30・4・10厚生労働省令第60号=高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則の一部を改正する省令)
国際観光旅客税の創設
観光先進国実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図るための恒久的な財源確保のため「国際観光旅客税」が創設されました。
原則として、船舶または航空会社(特別徴収義務者)が、日本から出国する旅客(国際観光旅客等)から、出国1回につき1,000円を徴収し、国に納付することとされました。
(平成30・4・18法律第16号=国際観光旅客税法)
古物営業に関する規定の整備
近年、古物商等の営業所等の全国展開が進んでいることを鑑み、事業者負担軽減のため、その受けるべき許可を、「営業所等の所在する都道府県ごとの公安委員会の許可」から「主たる営業所等の所在する都道府県の公安委員会の許可」に改めるとともに、仮設店舗における古物の受取りに係る営業の制限が緩和されます。
(平成30・4・25法律第21号=古物営業法の一部を改正する法律)