物品やサービスを売買したり、金銭を貸借したりする場合の契約等に関する基本的なルールを規定する民法の債権法部分について、今日の社会経済情勢に適合させることなどを目的に、1896(明治29)年の制定以来、初めて抜本的な見直しが行なわれました。
主な改正内容は、次のとおりです。
(1)「意思能力」に関する規定の新設
法律行為の当事者が意思表示をしたときに、重度の認知症などで意思能力を有していなかったとき、その法律行為は無効とされることなどの措置が講じられます。
(2)債権の「消滅時効」の統一
飲食代は1年、弁護士報酬は2年など、これまで債権の内容によってばらつきがあった消滅時効が、次のとおり統一されることとなりました。
①債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年間行使しないとき
②権利を行使することができるときから10年間行使しないとき
(3)「法定利率」の引下げ
現在、年5%の固定制の法定利率が、超低金利が続く実勢と乖離していることを受けて、年3%に引き下げられ、3年ごとに1%刻みで見直す変動制が導入されることとなりました。
(4)「連帯保証」の見直し
中小零細企業への融資の際、連帯保証人になった親族や知人等が自己破産に追い込まれる例があることなどから、事業のための借金について、法人以外の第三者が保証契約を結ぶには、保証契約締結前1か月以内に作成された「公正証書」によらなければ効力を生じないとされるなどの措置が講じられます。
(5)「約款」に関する規定の新設
これまで民法に規定のなかった「約款」に関する規定が新設されました。約款を契約内容とすることを事前に示していた場合は、消費者が内容を理解していなくとも有効とされますが、消費者が一方的に不利になる内容のものは無効とされることとなりました。
(6)「敷金」に関する規定の新設
家主は住宅の賃貸借が終了したときに、敷金を返金しなければならず、また、経年劣化に伴う修繕費について、借り主の負担義務はないとすることなどの措置が講じられます。
その他の新法令・通達
福島の帰還困難区域内に人が住めるよう拠点を整備
東京電力福島第1原発事故で立入りが制限されている帰還困難区域内に人が住めるよう拠点を整備し、国費で除染を進めることとされました。福島から避難した子どもへのいじめに対する防止策も講じられます。
(平成29・5・19法律第32号=福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律)
肥料や農薬などの農業資材の供給や流通を効率化
農業の競争力強化の取組みを支援することなどを目的とする農業競争力強化支援法が成立しました。
肥料や農薬などの農業資材メーカーや流通業者などを対象に業界再編や事業参入を金融面で支援するなどの措置が講じられます。
(平成29・5・19法律第35号=農業競争力強化支援法)
成長分野の即戦力を育成する「専門職大学」が創設
既存の大学や短大とは別に、ITなど成長分野における即戦力の人材育成を目指す新たな高等教育機関として「専門職大学」「専門職短期大学」が創設されることとなりました。
(平成29・5・31法律第41号=学校教育法の一部を改正する法律)
フィンテック企業に登録制を導入し、情報管理を徹底
ITと金融を融合した「フィンテック」の普及とその利用者の保護を目的とする新制度が創設されました。
金融ITサービスを手掛けるベンチャー企業(電子決済等代行業者)に対して登録制を導入し、情報管理や財務の健全性保持を求めます。2018年春より始まる見通しです。
(平成29・6・2法律第49号=銀行法等の一部を改正する法律)