中小企業の事業承継の形態が多様化しています。
近年は、経営者の親族以外への承継が増加傾向(全体の約4割)にあることから、昨年8月に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)」が改正され、4月1日に施行されました。
これに伴い、同法の施行規則および「小規模企業共済法」「独立行政法人中小企業基盤整備機構法(中小機構法)」の施行規則等についても一部改正されています。
あらためて、改正点をまとめておきましょう。
(1)経営承継円滑化法の改正点
① 遺留分特例制度(*)の対象を親族外へ拡充
対象が親族内承継に限定されていた「遺留分特例制度」について、親族外承継の際にも適用できるようになりました。
*遺留分特例制度
後継者が、経営者から贈与を受けた株式について、事前に後継者以外の親族と合意し、経済産業大臣の確認を受けることにより、遺留分放棄の法的確定に係る家庭裁判所の申請手続きを単独で行なうことが可能となる制度です。
② 中小企業基盤整備機構(中小機構)による事業承継サポート機能の強化
中小機構が、事業承継に係る計画的な取組みを後押しするため、経営者、後継者などに対して必要な助言などサポートを行なえるようになりました。
(2)小規模企業共済法の改正点
個人事業者や会社等の役員が、廃業・退職後の生活の安定等を図るための資金として積立てを行なう小規模企業共済制度が見直されました。
① 小規模企業者の事業承継の円滑化
個人事業者が親族内で事業承継した場合や、65歳以上の会社役員が退任した場合の共済金が引き上げられました。
② 小規模企業者の経営状況に応じた掛金の柔軟化
小規模企業共済制度の利便性向上を図るため、経営状況に応じて掛金を柔軟に変更できるようになりました。
(3)中小機構法の改正点
① 中小機構による事業承継サポート機能の強化((1)②同様)
事業承継に際して、中小機構が経営者、後継者等をサポートできるようになりました。
② 中小機構による共済加入時の「申込金」に係る金融機関への委託業務の廃止
共済加入手続きの簡素化のため、申込金が廃止されました。
詳細は、中小機構のサイト(http://www.smrj.go.jp/index.html)でご確認ください。
その他の新法令・通達
平成28年度税制改正の関連法施行に伴う各法令等の改正
平成28年度税制改正で成立した「所得税法等の一部を改正する法律」の施行に伴い、関係法令の改正等が行なわれました。
(平成28・3・31法律第13号=地方税法等の一部を改正する等の法律、法律第15号=所得税法等の一部を改正する法律ほか)
平成28年度雇用保険料率改正
平成28年度(平成28年4月1日から平成29年3月31日まで)の雇用保険率が告示されました。失業等給付の雇用保険料率は労働者負担・事業主負担とも1000分の1ずつ引き下げられ、雇用保険二事業の保険料率(事業主のみ負担)は1000分の0.5引き下げられました。
(平成28・4・1 厚生労働省告示第187号=労働保険の保険料の徴収等に関する法律の規定に基づき雇用保険率を変更する件)
消費税の軽減税率制度に関する取扱通達の制定
平成29年4月1日から導入予定の消費税の軽減税率制度に関する取扱通達が出されました。
(平成28・4・12国税庁課軽2-1ほか・法令解釈通達=消費税の軽減税率制度に関する取扱通達の制定について)
熊本地震を激甚災害指定
平成28年4月14日以降に発生している熊本地震による災害を激甚災害に指定する政令が決定し、雇用保険の特例措置が適用されることとなりました。
(平成28・4・26政令第207号=平成28年熊本地震による災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令)