平成28年度税制改正大綱が発表されました。現下の経済情勢などをふまえて俎上に載せられたのは、消費税の軽減税率制度の導入のほか、法人税関連では次のような事項です。
(1)成長志向の法人税改革
1 法定実効税率の引下げ
国・地方を合わせた法定実効税率(現行=32・11%)を段階的に引き下げます(参考:平成30年度=29.74%へ)。
2 課税ベースの拡大等
①租税特別措置の見直し
適用期限が切れた措置すべてについて縮減・廃止します。
- 生産性向上設備投資促進税制の縮減・廃止…現行の即時償却等→平成28年度=特別償却率50%等→平成29年度=廃止
- 環境関連投資促進税制の見直し(売電用の太陽光発電設備の除外)
- 雇用促進税制の見直し(対象地域・対象雇用者の限定)
②減価償却制度の見直し
平成28年4月1日以降に取得する建物附属設備・構築物(鉱業用の資産を除く)の償却方法を定額法に一本化します。
③欠損金の繰越控除制度のさらなる見直し
改革の加速化に伴う企業経営への影響の平準化のため、大法人の控除限度を見直します(平成28年度=所得の65%→60%)。
④法人事業税の税率引下げと外形標準課税の拡大
資本金(出資金)1億円超の普通法人の法人事業税・地方法人特別税の税率を改正します。外形標準課税の割合は8分の5に拡大されます。
(2)地方法人課税の偏在是正
平成29年度より次の措置がなされます。
② 地方法人特別税および地方法人特別譲与税の廃止
③ 法人事業税交付金の創設
(3)地方創生の推進・特区にかかる税制上の支援措置
次の措置がなされます。
② 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設
③ 国家戦略特別区域における指定法人の所得の特別控除制度の創設
(4)復興支援のための税制上の措置
復興産業集積区域において機械等を取得した場合の特別償却または税額控除制度について一定の見直しを行いつつ、適用期限を5年延長(被災地の実情等をふまえ一部要件を緩和)するなどの手当てがなされます。
本大綱の全体像については、月刊「企業実務」2016年3月号(2016年2月25日発行)で解説する予定です。
その他の新法令・通達
法人課税関係の申請、届出等の様式の変更(法令解釈通達)
所得税法等の一部を改正する法律の施行等に伴い、法人課税関係等の申請、届出等の様式が一部変更されました。
(平成27・12・2国税庁課法11-8=「法人課税関係の申請、届出等の様式の制定について」の一部改正について)
健康保険法施行規則等の一部改正
平成28年10月1日からの短時間労働者に対する健康保険の適用拡大に向けて、新規適用事業所(事業主は法人に限る)の届出の記載事項に法人番号を追加するなどの改正がありました。
(平成27・12・15厚生労働省令第一六九号=健康保険法施行規則等の一部を改正する省令)
特定個人情報の安全の確保に係る重大な事態の報告に関する規則等の公布・告示
改正番号法の施行に伴い、特定個人情報の漏えいその他の特定個人情報の安全の確保に係る重大な事態の報告に関する規則等が公布・告示されました。
(平成27・12・25特定個人情報保護委員会規則第五号=特定個人情報の漏えいその他の特定個人情報の安全の確保に係る重大な事態の報告に関する規則)
労災保険に関する文書様式の一部変更
障害補償給付支給請求書など労災保険における一定の請求様式に個人番号の記載欄を追加する等の改正が行なわれました。
(平成27・12・25厚生労働省告示第四七九号=労働者災害補償保険法の施行に関する事務に使用する文書の様式を定める件の一部を改正する件)