――龍は中国王権のシンボルである。水中に棲む龍は降雨をもたらし、時いたれば天に昇る。水中と天を往来する超越的な動物とされて、王の乗物となり、王権の象徴となった。
中国皇帝の着衣、宮殿にも龍の紋様や彫り物がある。それも日本では決して見られない龍である。何が違うのか?
中国皇帝の着衣模様や宮殿の龍は、指が5本ある。ところが日本の龍は中国皇帝に遠慮して4本までである。徳川家ゆかりの江戸期の建築物に彫られたり、描かれた龍でさえも、指は4本までのものしか見たことがない。
日本で龍の絵や彫刻に出会ったら、その指の数を数えると興味深い。多くて4本までで、地位によって指の数は減る。江戸時代までは中国王権に謙虚なもので、5本指の龍があれば、それは日本では近代の産物である。