―― ふだん目にしている景色が、じつは中世の歴史を物語っていたりする。たとえば山城は、いまもその跡を日常の風景のなかに見つけることができる。だが、それ以上に多いのが狼煙台だ。城跡以外で見晴らしのよい場所は、ほとんど狼煙台の跡と考えたほうがよい。
ランドマークのように今もマイクロ回線の塔や送電線の鉄塔が立っている。どちらも工事と保守点検のために道路が必要なので、昔から使っている道があった場所を使用しているからだ。
平地にも狼煙台がある。山から山へ狼煙を上げて連絡しても、平地の居館から応答する狼煙台も必要だった。
その跡は塚のようにマウンド状になっていて「鳥見塚」とかの地名が多い。「鳥見」は狼煙の別名「飛ぶ火」の転訛。トミ(富・十三)塚、トンビ(鳶)なども狼煙を意味する「トブヒ(飛ぶ火)」の転訛である。