マイナンバー法は、すべての事業者に関係する法律なの?
社員15人のホームページ制作会社です。マイナンバー法はすべての事業者に影響をもたらすと聞きましたが本当ですか。具体的にはおおよそどのような影響ですか。うちのような小さな会社でも同じなのでしょうか?
規模に関わらず、すべての事業者にマイナンバー法は適用されます。
「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下「マイナンバー法」と呼びます)は、マイナンバーを取り扱うすべての事業者に適用されます。
マイナンバー制度は「社会保障・税番号制度」とも呼ばれています。その名の通り、平成 27 年 10 月以降に通知が始まるマイナンバーは、「社会保障」や「税」に関する行政手続きで利用されることになります。具体的には、「社会保険関係の書類」や、「税関係の書類」にマイナンバーを記載する必要が生じます。
企業では、従業員との関係では、健康保険等の「社会保険関係の書類」を行政機関等に提出しますし、源泉徴収票等の「税関係の書類」を税務署等に提出します。また、従業員との関係のみならず、例えば、取引先に関しては、税務署等に支払調書を提出します。
平成28年1月以降、このような書類にマイナンバーを記載することになりますので、企業の規模に関わらず、すべての企業がマイナンバーを取り扱うことになり、マイナンバー法の適用の対象となるわけです。
マイナンバーを取り扱う事業者には、細かな規定が設けられています。
企業としては、上記の社会保障関係・税関係の書類にマイナンバーを記載するために、従業員や取引先の方々からマイナンバーを取得する等の必要が生じます。そこで、マイナンバー法には、マイナンバーの「取得」「利用・提供」「保管・破棄」に関する規定が設けられています。
例えば、「取得」の際には、厳格な本人確認が必要となりますし、「利用・提供」の際には、目的外利用が禁止されています。
また、「保管・破棄」についても、マイナンバーが記載された書類は、必要がある場合にのみ保管できるとされています。不必要になった場合には、速やかに破棄することが求められています。
さらに、特定個人情報保護委員会が公表しているガイドライン上、マイナンバーの漏えい等を防ぐための「安全管理措置」を講じることが求められています。
その内容としては、以下の6つの観点が挙げられています。
- 基本方針の策定
- 取扱規程等の策定
- 組織的安全管理措置
- 人的安全管理措置
- 物理的安全管理措置
- 技術的安全管理措置
これらのうち、1. 以外は義務として定められています。
従業員数 100 人以下の中小規模事業者は特例が受けられます。
ガイドラインの下では、一定の中小規模事業者について、例外的に安全管理措置の内容が軽減されています。
軽減が認められている事業者は、従業員の数が 100 人以下の事業者です。
ただし、下記に該当する場合は、この例外に含まれず、内容の軽減がなされません。
- 個人番号利用事務実施者
- 委託に基づいて個人番号関係事務または個人番号利用事務を業務として行う事業者
- 金融分野(金融庁作成の「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」第1条第1項に定義される金融分野)の事業者
- 個人情報取扱事業者
ご質問では、社員が 15 人のホームページ制作会社ということですので、100 人以下の事業者に当たります。ⅳ. が問題となり得ますので、これに当たるかのチェックが必要となります。これに当たらない場合には軽減を受けることになります。
具体的な軽減内容としましては、「取扱規程等の策定」が義務ではないとされていることが挙げられます。取扱い等を明確にしていれば、マイナンバーの取扱に関する社内規程の作成まではしなくてよいこととなります。
また、その他のいくつかの安全管理措置が通常の場合より軽減されています。
マイナンバー法は、個人情報保護法の特別法であり、同法の下では罰則がなかった多くの行為について、厳しい罰則を規定しています。情報管理に関するリスクは、レピュテーションリスク(評判リスク)にとどまりません。このことには注意が必要です。
いずれにせよ、自社に関わる方々に関する極めて重要な情報を取り扱うことになります。そのことを意識して、工夫をして対応することが求められます。
- ▼連載「中小企業とその社員のためのマイナンバー対応Q&A」
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- 第12回 安全管理措置などの義務が守れそうにありません!
- 第11回 社員からマイナンバーの提供を受けるときの「本人確認」って?
- 第10回 そもそもマイナンバー制度を始めた目的は?
- 第9回 もしもマイナンバーの提出を拒否されてしまったら?
- 第8回 法人番号とは何? どんなときに使うものなの?
- 第7回 採用内定者や派遣社員からマイナンバーを取得するタイミングはいつ?
- 第6回 クラウドサービスを使って収集・保管するときに気をつけることは?
- 第5回 社員などから集めたマイナンバーを管理するうえでの注意点は?
- 第4回 マイナンバーについて、いつまでに、どのような内容の従業員教育が必要?
- 第3回 もしも、マイナンバーを漏えいさせてしまったら?
- 第2回 アルバイトからマイナンバーを取得するときに注意することは?
- 第1回 マイナンバー法は、すべての事業者に関係する法律なの?