コスト削減もあり、役員登記を社内でやろう、という意見が出ています。司法書士の資格がなくても、役員登記はできるのでしょうか。
専門家の立場からいえば、通常は1年に1度も発生しない役員変更登記のために担当者の手を煩わせるのは非効率のような気がします。
司法書士に依頼すれば早く正確に処理できますし、会社に最適な方法を提案してくれるでしょう。簡単な役員変更であれば、報酬もさほどの額にはなりません。
とはいっても、予算等の都合によって社内で処理している会社もあります。同じ取締役が続投するなど単純なケースであれば、過去の議事録ファイルの内容を流用して、そこに修正を加えるやり方でも問題が起きることは少ないでしょう。
ただし、担当者が登記に不慣れであったり、定款変更を伴うなど種々の要素がからむ場合は、迷わず専門家に依頼することをお勧めします。
よくあるミスの一例として、任期にまつわるものがあります。例を挙げると、
- 取締役の任期は2年
- 取締役としてA、B、Cの3名が登記されていた
- 任期を1年残してCが辞任し、その後任としてDが就任した
というケースで、AとBの任期が到来したときに、AとBの登記だけをしてDの登記を忘れることがあります。Dは「あと1年任期が残っている」と誤解してしまうのです。
普通の株式会社の定款には、役員の任期を揃えるために、「補欠・増員の取締役については、他の役員の任期と合わせる」といった規定が置かれているのが一般的です。
そうしたときは、任期の途中でCと交代したDも、AとBと同じタイミングで任期が満了することになります。
※本記事は、月刊「企業実務」(2013年6月号)に掲載した「役員の選任・変更登記の疑問に答えるQ&A」を2015年5月時点の法令に基づき、企業実務オンライン用に再構成したものです。