税理士も弁護士もじつは知らない? 契約書に貼る印紙の仕組み
会社が契約書を作るとき、その内容についてアドバイスを求めたければ、法律の専門家である弁護士に相談するでしょう。そのとき、その契約書に貼る印紙について弁護士に尋ねたら、どんな答えが返ってくるでしょうか。
「税金のことは税理士に聞いてください」
おそらくそう答える弁護士が多いのではないでしょうか。
ところが、税金の専門家である税理士も、じつは印紙税の仕組みについてはよく知りません。それも当然で、税理士試験や公認会計士試験において「印紙税」の科目は存在しないのです。したがって税理士試験に合格しても印紙税に関する知識はほとんどないのがふつうで、あとは会計事務所等で実務経験を積むしかありません。
そもそも税理士法において、印紙税は税理士の職務から除外されています。
税理士法第2条
『税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、〈中略〉その他の制令で定めるものを除く。以下同じ)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。』
契約の専門家である弁護士も、税金の専門家である税理士も、「契約書に貼る印紙」については、じつはあまりよく知らないのです。
工夫次第で、印紙税はもっと節税できる!
あるベテラン税理士は、顧問先から契約書に貼る印紙税の相談を受けたときは、その契約書のコピーをもって税務署に行く、と言います。というのも、「その契約書に印紙は必要か」「いくらの印紙を貼ればいいのか」については、契約書に書かれている内容や金額の記載方法などによって違ってくるからです。
本屋で見かける印紙税の解説本の中には、「文書名の索引付き」というのを謳い文句にしているものがよくあります。しかし、正しくは文書名から印紙税がかかるかどうかを判断することはできません。タイトルが「○○契約書」であろうと、「○○覚書」であろうと、印紙税は、あくまでもその文書に書かれている内容で判断されるからです。
逆に考えれば、同じ「○○契約書」というタイトルで同じような契約内容であっても、記載の仕方によって印紙税がかかることもあれば、ちょっとした文言の違いで印紙を貼る必要がなくなる、ということもあるわけです。
そもそも、日本で最初に印紙が貼られたのは、「生糸」でした。明治のはじめ、粗悪な生糸の輸出を取り締まるため、政府が「生糸」の品質を保証する証しとして生糸印紙を導入しました。印紙は、政府の〝お墨付き〟だったわけです。
しかし現代では、印紙が貼ってあろうとなかろうと、契約書の効力には何の影響もありません。仕組みをちゃんと理解すれば、アイデア次第でいくらでも節税できる。印紙税は、そんなユニークな税金でもあるのです。
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【本書の紹介】
『課税判断から印紙税額の計算まで
事例でわかる印紙税の実務』
A5判並製256ページ 頒価2,500円(税別)
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本書は、印紙の貼り漏れ&貼り過ぎを避けたいという人のために、ビジネスでよく交わされる契約書等を例にとり、課否判断のポイント、税額計算の仕方を解説しています。
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