【本書の紹介】
『課税判断から印紙税額の計算まで
事例でわかる印紙税の実務』
A5判並製256ページ 頒価2,500円(税別)
様々な契約書や受取書に貼る「印紙」。身近な税金ながらその仕組みはとても複雑で、契約書を前にして「印紙が必要なのか、よくわからない」と悩んだ経験のある方も多いのではないでしょうか。
本書は、印紙の貼り漏れ&貼り過ぎを避けたいという人のために、ビジネスでよく交わされる契約書等を例にとり、課否判断のポイント、税額計算の仕方を解説しています。
そもそも印紙税って何? というところから知りたい方はステップ1〈印紙税の基礎知識〉へ。どんな契約書に印紙がいるのか、いくら貼ればいいのかを知りたいという方はステップ4〈契約書例で見る印紙税の判断ポイント〉へ。誰が読んでも、どこから読んでも役に立つ、印紙税実務の入門書です。
「修理承り票」に印紙を貼らず3,300万円の過怠税が…
「えっ、『修理承り票』に印紙がいるの?」
そんな風に思われた方も多いのではないでしょうか。
一般に「印紙」というと、契約書や領収書、手形などに貼るものというイメージが強いかもしれませんが、それだけではありません。
家電やパソコンなどの修理を請け負った際に出す「修理承り票」も、修理する箇所や方法などが書かれているものは「請負に関する契約書」と見なされ、印紙税が課税されます。
かつては大手スーパーのダイエーが、大阪国税局の税務調査で印紙税約3,000万円の納付漏れを指摘されました。2012年5月15日付の毎日新聞によれば、自転車修理の請負契約の伝票など約15万枚分に印紙を貼っておらず、追徴された過怠税は約3,300万円とみられています。
ダイエー側にしてみれば、全国の各店舗で直営する自転車修理コーナーで客に渡す「修理承り票」に印紙が必要になるとは、おそらく思いもよらないことだったのではないでしょうか。
修理代金を記載していれば印紙はいらなかった!?
自転車の修理請負は請負契約に該当し、その伝票は印紙税額表の「第2号文書」となります。記載金額が1万円以上もしくは契約金額が不記載の場合には、印紙を貼る必要があるのです。
たとえば1万円以上100万円以下の場合は200円。1万円未満であれば非課税ですが、金額の記載がない場合にも200円の印紙税がかかります。
ダイエーの例でいえば、修理承り票の多くに金額が記載されていなかったために、200円の印紙が必要だったようです。
ところで、自転車の修理に1万円以上かかるというケースがそれほど多いとは思えません。ダイエーが納付漏れを指摘された自転車の修理代金のほとんどが、おそらく1万円未満だったのではないでしょうか。もしそうならば、納付漏れを指摘された「修理承り票」に金額が記載してあれば、その多くが非課税文書だったことになります。
印紙を貼っていなくても、国税局に納付漏れを指摘されて3,300万円もの過怠税を納めることはなかったはずです。
金額を書いたか、書かなかったか。それだけの差で、納める税金が3,000万円以上も違ったことになります。しかも、過怠税は法人税の損金や所得税の必要経費には算入されないので、ダイエーにしてみれば、本当に痛いミスだったことでしょう。
法人税などと比べると、印紙税は金額も小さく、目立たない税金です。しかし、塵も積もれば山となるという喩えもあるとおり、気づかないうちに余計な印紙をたくさん貼っていたり、逆に納付漏れを指摘されて多額な追徴課税を納めたりする羽目に陥ることがないとも限りません。
甘く見ていると、痛い目に合う…。印紙税は、じつは怖い税金なのです。
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