「捺印」と「押印」は何が違う?
契約書などの文書に「印章(ハンコ)を押す」ことを「捺印」「押印」といいますが、それには、どんな意味があるのでしょうか。
じつは「捺印」と「押印」という言葉自体に明白な違いはなく、いずれも印章を押す行為であり、実際には「記名」「署名」と組み合わせて使うことがほとんどです。
しかし、「署名」と「記名」では、争いとなった場合の証拠力が異なるので注意が必要です。
「署名」は本人が自筆で氏名を手書きすることで証拠力が高いとされ、「記名」とは自署以外の方法(ワープロ文字など)で氏名を記載することなので、記名のみでは証拠力は低いと考えられています。
したがって、証拠力としては高いほうから順に、
となります(いずれも、住所・所在地等が記されているものとします)。
ただし、法人の代表社印(法務局へ実印登録した印)が押さえている場合は、「署名捺印」と「記名捺印」はほぼ同等といえます。
捺印がなく、記名のみの場合は、ほとんど証拠力はないといえるでしょう。
ちなみに、契約書などに捺印するのは、日本固有の慣習です。欧米諸国にそういった習慣はなく、サイン(自筆の署名)だけで有効な意思表示の証拠になります。
当然ながら、海外企業との契約は、サインのみで成立します。
会社が使う印章の種類と決まり
会社が使う印章として代表的なものは、以下の3つです。
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会社の実印として法務局へ会社設立の登記を行なった際に、あわせて登録する印章。個人の実印の場合、印鑑証明は登録している市区町村が発行するが、代表者印の印鑑証明は法務局が発行する。通常、「〇〇株式会社代表者之印」といった文言が彫られ、丸印が使われる。
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会社の見積書や請求書、領収書など日常業務に使われる印章で、「社印」とも呼ばれる。通常、「〇〇株式会社之印」など会社名が彫られ、いわば会社の「認め印(三文判)」として、さまざまな場面で使われる。
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金融機関での口座開設などの手続き(小切手・手形関連)に使われる印章。通常は、経理部門が保管・管理している。
なお、創業して間もない小さな会社・個人事務所では、使用頻度はそれほど高くなく、厳重に保管してあるだけという実情もある。
法務局へ実印登録する印章は、「印影の1辺が 10 ミリを超え 30 ミリ以内の正方形に収まるもの」と決められていますが、それ以外はサイズについて厳密な決まりはありません。
上記の3つの印章の他、会社印として使用頻度の高いものに、一般的に「社判」あるいは「ゴム印」と呼ばれる印章があります。
その定義はまちまちですが、社名・所在地・連絡先を記し、納品書や請求書、領収書など日常業務で頻繁に使用する印章です。
- ▼連載「印章(ハンコ)のビジネス常識」