どうする? 課税処分に納得がいかないとき
あなたの会社に税務署等の税務調査が入ったとします。申告漏れを指摘され、課税処分がなされました。
しかし、社長は課税処分の内容にどうしても納得がいきません。「しかるべき手続きをとって、審査をやり直してもらう!」と言っています。
このような場合の「しかるべき手続き」とはどのようなものでしょう。
平成28年3月以前に行なわれた処分であれば、国税の不服申立手続きについては、税の処分の大量性、争いの特殊性を鑑み、行政処分を実際に行なった行政庁(税務署等)へ「異議申立て」を経たうえでなければ、国税不服審判所に対して「審査請求」をすることができません。その裁決に不服がある(あるいは、3か月を経過しても裁決が出ない場合)ときに初めて、原処分取消訴訟を地方裁判所に提起できます。
しかし、平成26年6月に行政不服審査法が抜本的に改正され、それに伴い国税通則法の不服申立てに関する規定も改正されました(平成28年4月1日施行)。
これにより、平成28年4月1日以降の処分について、国税に関する処分に不服がある場合は、次のように規定されています。
第75条 国税に関する法律に基づく処分で次の各号に掲げるものに不服がある者は、当該各号に定める不服申立てをすることができる。
1 税務署長、国税局長又は税関長がした処分(次項に規定する処分を除く。) 次に掲げる不服申立てのうちその処分に不服がある者の選択するいずれかの不服申立て
イ その処分をした税務署長、国税局長又は税関長に対する再調査の請求
ロ 国税不服審判所長に対する審査請求
2 国税庁長官がした処分 国税庁長官に対する審査請求
3 国税庁、国税局、税務署及び税関以外の行政機関の長又はその職員がした処分 国税不服審判所長に対する審査請求
これまでは原則として、処分に不服があるときはまず、処分をした税務署長等に対して、「異議申立て」をする必要がありました。しかし、一般的に考えて、課税処分をした課税庁に再調査の請求をしても認められる可能性は低いと思われます。
そこで改正後は、処分をした税務署長等に対して「再調査の請求(異議の申立て)」をせずに、直接、国税不服審判所に審査請求を求めることもできるようになったのです。
そして、国税不服審判所の裁決にも不服があるときは、地方裁判所に処分取り消しの訴訟を提起できます。
税金は〝法律に則って〟納めるもの
もっとも、税務訴訟では納税者側が勝利する確率は低いのが実情です。ですが、最近では租税法律主義に基づき、税法の文理解釈※を厳格に行う傾向(実質課税に慎重)にあるといわれます。
※文理解釈とは、法規の解釈において,その法文の字句や文章の意味を文法的に明らかにすることを中心としてなされる解釈(大辞林第3版)
正しい申告納税をするのは国民の義務ですが、日本は法治国家ですから、法律にない課税はありえません。
憲法は、「租税法律主義」の原則を次のように明記しています。
筆者の経験でも、国税不服審判所の審判官から、「税法の規定を厳格に解釈して判断する」と言われたことがあります。
これは、税務署等の課税庁にとっても、法律に規定がないものを実質課税により拡大解釈してむやみに課税することはできない、ということに他なりません。
課税処分に不満があるときは、納得のいく説明を求めよう
税務署長等がした処分に不服があるときは、国税不服審判所に直接、審査請求をすることができます。
あいまいな法律の規定で課税処分が科された場合には、納税者の権利を守るために国税不服審判所に審査請求することを検討しましょう。
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