クラブの雇われママが「不当解雇」で店を訴えた…
2015年11月、東京地方裁判所である判決がありました。
銀座のクラブでママとして働いていた女性が契約解除になり、労働者に対する不当解雇だとクラブ側を訴えた裁判でしたが…。
東京地方裁判所の判断は、クラブのママだった女性は労働契約ではなく業務委託契約であったというものでした。ただし、契約解除の理由が明確(やむを得ない理由があったかどうか)ではないということで、女性に生じた損害についてクラブ側に賠償責任があると認定しました。
産経新聞の記事(2015年11月22日付)によりますと、出勤は月曜から金曜の午後9時から午前1時で、報酬は女性が売り上げた額の60%、契約期間は1年間というものでした。
東京地裁は、この女性の出勤は自由で、女性の報酬は接客(労働)の対価ではなく、クラブに利益をもたらすことへの対価(請負)であると判断したのです。
契約社員と業務委託契約を結ぶと「労働契約」じゃなくなる?
法人税の計算において、業務委託費(外注費)でも給与でも損金(経費)には変わりません。しかし消費税は、支払ったのが業務委託費なのか、社員への給与なのかで、計算が大きく違ってきます。
そのため、消費税基本通達には「個人事業者と給与所得者の区分」を定める次のような規定があります。
1-1-1 事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しない(中略)支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによる(中略)その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。
(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。
最近、社会保険料の負担が増えることを嫌い、契約社員などを業務委託契約に変更する会社がありますが、実態は労働契約である例をよく見受けます。
業務委託契約でありながらタイムカードを押している会社もありますが、そうしたケースは、税務調査ではまず否認されると思います。
労働契約か業務委託契約かは「実態」で判断
業務委託費と認められるためには、個人事業者と給与所得者の区分が明確である必要があります。
無利息・無催促の借金は「金銭消費貸借」と認められるか?で書いたように、形式だけの契約書があってもダメで、業務の実態で判断されます。
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