55歳定年から60歳定年、そして65歳定年へ
日本の企業に定年制が設けられたのは 1920 年代といわれています。その年齢は55歳。当時の平均寿命は男女とも 45 歳前後でしたから、まさに、“生涯現役”の仕事人生だったといえます。
その後、1980 年代に入り、世の中の流れとともに、定年年齢が 55 歳から 60 歳になり、1998 年の高年齢者雇用安定法の改正により 60 歳定年が義務化、さらに、2013 年には 65 歳までの雇用確保措置が事業主に課されました。
定年年齢が延びたといっても、今や日本の平均寿命は世界一。男性が 80.21 歳、女性は 86.61 歳(2013年。厚生労働省のデータより)ですので、15 年~ 20 年にわたる定年後の人生がやって来ることになります。
少し話は飛びますが、国内では 100 歳以上の高齢者が5万人を超え、すでに国民の約 2,000 人に1人が 100 歳以上である事実をご存知ですか? 日本は飛びぬけた高齢化社会になっているのです。
ところで、「定年」は必要な制度なのでしょうか?
ちなみに、アメリカでは日本のような終身雇用制度はありませんが、一方で、年齢を理由にして事業主が労働者を差別することは禁止されています。(航空機のパイロットやバスの運転手など、例外的に定年制を設けることが許される職業以外は)年齢を理由に労働者を退職させることはできず、よって定年もありません。
カナダ、オーストラリア、ニュージーランドについても同様に定年制は禁じられており、イギリスでも 2011 年 10 月から定年制が完全に撤廃されました。
再び「生涯現役」が当たり前の時代に?
実は、日本でも、「定年後再雇用の場合、何回でも有期雇用契約を結べる」という無期転換ルールの特例が施行(2015 年 4 月 1 日)されていますので、今後は「生涯現役」の方向で進むかもしれません。
もうすこし国内に目を向けてみると、実は全就業者数の1割超を65歳以上の高齢者が占めています(2013 年。総務省「労働力調査」より)から、すでに、“定年後にまたひと仕事”の時代が根付き始めているともいえそうです。
「仕事が好きだから働く」という方もいらっしゃいますが、長い会社員生活を卒業して悠々自適に暮らせることができるのであれば、「仕事に固執しない、ハッピーライフを送ることが理想」と考える方も多いのではないでしょうか。
しかしながら、実質目減りしていく年金への不安、高齢者を取り巻く医療や介護環境の悪化など、多くの方が、現実には「どうしても働かざるを得ない」状況になってしまいます。
ところで、「50歳」とはどういう年齢でしょう?
50歳だから、考えておきたいこと
かつては、そろそろ自らの老後のことを考えれば良かったかもしれません。しかし現在は、まずは親の介護、そしてその後に自分の老後問題を考える年齢です。また、生涯未婚率も男性は 20.14 %、女性は 10.61 %(2010年。国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2014年)」より)ですので、今までのように老後生活を世帯単位で考える流れも変わりつつあります。
筆者は企業研修において、いわゆるシニア研修等をさせていただくことも多いのですが、求められる研修内容も年金や介護や医療などの社会保険分野はもちろんのこと、ファイナンシャルプランの立て方、私的保険の見直し、キャリアチェンジ、マインドチェンジ、起業への心得、おひとり様対応、老後の生き方など多種多様にわたっています。
そこで本連載では、50 歳である今こそ、立ち止まって考えるべきことや、“生涯現役”をめざすべくキャリアプランの立て方など、多くのテーマをいろいろな観点から取りあげて話を進めていこうと考えています。最後までお付き合いいただければ幸いです。
- ▼連載「50歳からのキャリアプランニング」
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- 第10回 もう50歳? まだ50歳? 悩める50代のためのライフプランニング
- 第9回 会社人生で培った知識&ノウハウ&人脈をシニア起業で花開かせたい
- 第8回 「PDCAサイクル」と「社会人基礎力」でオリジナルキャリアを描こう
- 第7回 「働きたいだけ働く」その先に待つ自由な時間に、あなたは何をしますか?
- 第6回 セカンドライフに必要な「保障」は何か?じっくり考えて保険を見直そう
- 第5回 「不純な動機」と「変化を楽しむ」気持ちが定年後の「やる気」に火をつける!?
- 第4回 キャッシュフロー表と家計バランスシートで定年後生活を「見える化」しよう
- 第3回 定年後の「ライフプラン=夢」と「お金」について考えよう
- 第2回 夫婦世帯、おひとり様…それぞれの視点から“アラフィフ・クライシス”に備える
- 第1回 定年後を見据え、いま考えておきたい「仕事・お金・生活…」