人生100歳時代の「50代」を考える
50代って若いのでしょうか? それともシニアなのでしょうか?
筆者が学生だった1970年代、企業の定年は55歳(!)でした。50代は現役生活とリタイア生活の両方を味わう世代だったのです。なんと女性ならば55歳から老齢の年金をもらえました。
その後、企業の定年年齢は60歳となり、いまや「65歳まで」雇用確保の時代です。
学校を卒業し、社会に放り出される年齢はほとんど変わっていないのに、嫌が応でも人生の荒波に揉まれる期間はどんどん延びています。会社人生の山を越え、谷を越えて、人の世の酸いも甘いも知りつくしたはずの50代になっても、なかなか「卒業」にたどり着くことができません。
それどころか、いまでは日本の人口の1,800人に1人が100歳以上なのだとか(2016年9月時点。厚生労働省発表)。そんな人生の大先輩たちからみたら、50代などまだまだ青い、若輩者です。
これって心底喜ばしいこと? それとも…?
どちらにしても、社会人になって30年以上ともなれば、「人生は楽しいことばかりじゃない」ということも身にしみてわかっています。
そう考えると、「これからの人生、楽しみ半分、懸念も半分」というのが、大方の人の率直な気持ちでしょう。
ところで、高齢者というのは何歳以上の人のことだと思われますか?
例えば「老齢の年金」は65歳から、雇用保険の「高年齢被保険者」は65歳から、介護保険もその事由を問わず「介護保険サービスの対象」となるのは65歳からです。
ならば65歳からでしょうか…。
でも、そういえば、2017年1月5日に、日本老年学会と日本老年医学会は、現在「65歳以上」とされている高齢者の定義を、「75歳以上」に引き上げるべきとの提言を行いました。心身の健康に関する複数の調査結果を基に、生物学的にみた年齢は、10年から20年前に比べて、5歳から10歳若返っていると判断されるからだそうです。
つまり、「65歳なんてまだまだ元気! 皆さん、もっともっと働けるよっ!」というメッセージとも捉えられます。これには「年金の支給開始年齢を引き上げる理由づけにされるのではないか?」などの憶測も呼んで、ちょっとした話題になりました。
リタイアメントライフをデザインするコツ
あらためて、50代とは?
間違いなくいえるのは、いまが人生の後半への入り口だということです。
本連載の第2回で、「アラフィフ・クライシス」の話をしましたね(夫婦世帯、おひとり様…それぞれの視点から“アラフィフ・クライシス”に備える)。50代は人生の前半から後半への橋渡しの時期です。若い頃とは違うたくさんの心配事が出てくる年代ゆえに、アラフィフ・クライシスとも呼ばれています。
そこで、50代は「いろいろなことを考えるべき世代」ともいわれます。すなわち、リタイアメントライフデザインです。
おそらく、考えるべき課題はすぐにわかると思います。あとは対策を立てるだけ。ですが、ここで多くの人がつまずいてしまいます。なぜでしょう?
もはやコワいものなしの若者のように楽観的にはなれません。日本の財政事情が火の車だということも知っています。年金・医療・介護のどれをとっても不安なことばかり…。危惧する事案ばかりが頭に浮かんでくると、多くの人は思うのです。
「先行き不透明な世の中だし、まっ、明日があるさ。今日はやめて明日考えよう!」と…。
で、気がつけば10年が過ぎ、あっという間に還暦です。定年後人生の始まりはすぐ目の前。そして、そのときになって必ず思うはずです。
「あ~あ、10年前にちゃんと考えて、少しでも手を打っておけばよかった。もう間にあわないんじゃないか?!」
10年後に後悔しないために、50代のいまこそ、じっくりと定年後の生活設計について考えましょう。
①問題の解決にこだわらず、リスクを回避(低減)することを考える
すべての問題に答えを出す必要はありません。明確な解決策がなくてもよいのです。時間そのものが解決してくれることもあれば、誰の力によるでもなく自然に解決することだってあります。もちろん、いまは考えも及ばないような悩みが出てくる可能性も否めません。
結局、先のことは誰にもわからない…。それが人生というものでしょう。
それでも、いま想定されるリスクを回避(低減)しておくことに意味があるのです。常に、問題意識を持つことが大事なのです。
課題に対してプランを立て、実行してみて、必要に応じてプランを立て直す。PDCAサイクルが活かせるのは仕事だけじゃありません(「PDCAサイクル」と「社会人基礎力」でオリジナルキャリアを描こう)。
将来の不安から目を背けるより、PDCAサイクルを使って積極的にチャレンジする人生を歩むほうが、ずっと素敵だと思いませんか?
誕生日やお正月、年度始めなどはいいチャンスです。ぜひ、定期的にライフデザインのCheck&Actを実行してください。
②文字に書き出して、問題を整理する
考えるときには、必ず、文字にして書き留めます。頭のなかだけで考えていると、なかなか物事が整理できず、思考が堂々巡りしてしまいがちだからです。
たとえば、不安に思う事例を書き出していくうちに、ひとつの解決策で、それらがすべて解消(低減)するのに気づくことがあります。たったひとつの問題が、100の不安事例の素になっていることだってあるのです。
50代から始めるライフプランニング
50代は本当に忙しく、悩むことの多い年代です。でも、60歳、70歳になってからふりかえってみると、やはり50代というのはまだまだ若い。可能性がいっぱいある年代ではないでしょうか。
50代も半ばになると、「あ~、疲れた。もう歳かな?」と思うことが出てきます。でも、その根底には、「まだまだやれるはずなのに。あ〜、情けない」と思う気持ちがあるはずです。
それが60代になると、まるで違ってきます!「疲れたなぁ。まっ、仕方ない。だってもう60代だもん」…というように。
体力の衰えを感じつつも、あきらめるにはまだ早い。それが50代です。
何かとビミョ~な、この50代という年頃をいかに過ごすか。どんな人生をプランニングするか。
ここから先は、そう…この記事を最後までお読みいただいた皆さん! 皆さん次第です。
- ▼連載「50歳からのキャリアプランニング」
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- 第10回 もう50歳? まだ50歳? 悩める50代のためのライフプランニング
- 第9回 会社人生で培った知識&ノウハウ&人脈をシニア起業で花開かせたい
- 第8回 「PDCAサイクル」と「社会人基礎力」でオリジナルキャリアを描こう
- 第7回 「働きたいだけ働く」その先に待つ自由な時間に、あなたは何をしますか?
- 第6回 セカンドライフに必要な「保障」は何か?じっくり考えて保険を見直そう
- 第5回 「不純な動機」と「変化を楽しむ」気持ちが定年後の「やる気」に火をつける!?
- 第4回 キャッシュフロー表と家計バランスシートで定年後生活を「見える化」しよう
- 第3回 定年後の「ライフプラン=夢」と「お金」について考えよう
- 第2回 夫婦世帯、おひとり様…それぞれの視点から“アラフィフ・クライシス”に備える
- 第1回 定年後を見据え、いま考えておきたい「仕事・お金・生活…」