勤務中に「15分程度の昼寝」で脳と気分をリフレッシュ!
“勤務中の居眠り”と聞くと、マイナスイメージをもつ人が多いが、それを制度として積極的に取り入れている会社がある。
さいたま市に本拠をおくリフォーム会社の株式会社OKUTA(オクタ)だ。
創業は1991年。自然派デザインリフォームブランド「LOHAS studio(ロハススタジオ)」を首都圏中心に展開し、無垢材や珪藻土など、住む人の健康や環境に配慮した自然素材を用いて安全性・快適性の高い住宅づくりに力を入れている。
健康と自然を大切にする精神は、同社の福利厚生制度にも反映されている。2013年より導入した「パワーナップ制度」もそのひとつ。社員が生き生きと働けるよう、疲れた時など、就業中でも昼寝をしてよいという制度だ。
「パワーナップ(Power Nap)」とは米国の社会心理学者が提唱する睡眠法で、15分程度の仮眠をとることで疲労が回復し、脳が活性化されて作業効率が上がるとされている。
また建築業界では、従来から職人が「昼食後に仮眠をとって午後の仕事の集中力を高める」習慣がある。
そうしたことから、創業者である奥田勇氏(現・会長)が昼寝を認める制度を発案した。
対象はパートや契約社員を含む全社員。昼休みを除く勤務時間帯で、自分が眠いと感じたタイミングで15分ほどの仮眠をとることができる。
事前の申請は不要で、各自のデスクや空いている会議室など、思い思いの場所で眠っていい。あくまでも「眠くなったら、眠ってもよい」という制度であり、各自の責任感や判断力を高めるためにも、利用は義務ではなく“権利”としている。
眠気が原因の「計算間違い」「書類作成ミス」が激減
仕事に影響のない範囲で責任をもって利用することで、「社員の自立を促す」という目的もあるそうだ。
「制度の導入当初は、『本当に寝てもいいの?』と半信半疑な社員も多く、寝づらい雰囲気もありましたが、上席者が率先して昼寝をすることで、誰もが気兼ねなく利用できるようになりました。
今では内勤社員の3分の1、約20人程度が日常的に制度を利用しています」(同社総務部広報課・佐藤友季氏)
制度の導入により、眠気が原因と思われるケアレスミスや食後にダラダラとしてしまう時間が格段に減ったそうだ。特に経理や総務など事務系の部門では、計算間違いや書類作成ミスが減り、効率アップにつながっているという。
その他にも、リフォーム担当のデザイナーが考えに行き詰まった時など、昼寝をして頭をリフレッシュしたり、外回りの営業職が居眠り運転の防止をかねて、疲れた時に営業車の中で仮眠するといった利用をしている。
パワーナップ(昼寝)中の社員に電話がかかってきた場合は、他の社員が「ただいま席を外しております」とフォローをする。社員が互いに気を配り合う機会が増えたことで、職場内の雰囲気もよくなるなど、副次的な効果も出ているそうだ。
制度の活用は基本的に各自の裁量に任されているが、全社員会議などでも必ず一定の昼寝時間を設定し、全社員が活用する機会を設けている。
パワーナップの時間を設けたことで、逆に「会議中には絶対に居眠りをしてはいけない」という意識が高まり、参加者の集中力も増して意見交換などが活発になったという。
「15分の昼寝の権利」が職場に「心のゆとり」をもたらす
パワーナップ制度は同社に様々な効用をもたらした。導入後の社員アンケートでは、
「集中して仕事ができるようになった」
「眠ってはいけないというストレスがなくなった」
など、好意的な意見が多数を占めている。
利用頻度の低い社員からも、「体調が優れない日には制度があって助かる」といった声が聞かれるなど、社員のメンタル面にもよい影響を与えていることがわかる。
効率的に仕事がこなせるようになるだけではく、自分の体調を優先して働けるようになったことで、健康や働き方に対する社員の意識も変わってきた。
「当社の基本理念は『持続可能な経営を行ない、地球環境の原則を尊重する』ことです。そのためには、社員が健康で生き生きと能力を発揮し、長く働き続けられる環境づくりが欠かせません。
パワーナップ制度が売上の増加や生産性向上に即つながるわけではありませんが、社員の心にゆとりをもたらしました。働く環境の充実という意味では、大きく寄与しているといえるでしょう」(佐藤氏)
パワーナップ制度に加えて、同社では、長期休暇制度や社外活動支援制度も導入。社員が健康で働き続けられる職場環境づくりは着々と進んでいる。
会社紹介
株式会社OKUTA
所在地さいたま市大宮区
業務内容住宅の新築・増改築の企画/設計・施工・管理、不動産仲介、建材販売等
従業員数300人(パート、アルバイトを含む)
http://www.okuta.jp/