成功するビジネスマンは〝失敗〟から学んでいる
前回、仕事(体験)を通じて学ぶ風土を作り上げいくことで、社員は知恵を出すようになると書いた(社員が「自ら考え、知恵を出し、行動する」風土をつくれ)。しかし、成功体験からは得るものが少ないと考えないといけない。
『週刊朝日』の名編集長として知られた扇谷正造は、
経験こそわが師、経験こそわが敵
という言葉を残しているが、師になるのは失敗体験であり、敵になるのは成功体験だといえる。
ドイツ最初の宰相ビスマルクの格言として、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」というのがあるが、この経験も「成功体験」を意味していると考えたい。
失敗から学べる人が、優良なビジネスマンになれるといってもいいだろう。
経営は試行錯誤の連続で、失敗談は限りなくある。商売に失敗はつきものだ。
10回新しいことを始めれば9回は失敗する——略——ほとんどの人は、成功した時も失敗した時も分析しない。何かボヤッと『成功してよかった』、あるいは『失敗してまずかったな』としか考えない。
実行した個々の内容を具体的に分析し、因果関係がはっきりとわかるまで考え抜くことが必要だ。抽象論ではなく、具体論で考える必要がある。
また、次の段階で成功するには、徹底分析した経験の蓄積が必要になる
これはユニクロの柳井正社長の著書『一勝九敗』の中の一文だが、優良な企業人に共通するのは、失敗した後の対応のうまさだ。
「失敗は成功への第一ステップだ」
柳井社長は、1997年に、「スポクロ」「ファミクロ」という新業態の店をスタートさせ、両店合わせて35店舗まで展開したが、1年以内に撤退しているし、最初のロンドン出店、また食品事業でも失敗を経験している。
しかし、こうした失敗体験がなければ、今日のユニクロはあり得なかったとまでいう。
筆者が知る先人の経営者で、失敗をその後の経営に生かすことに長けていたのは、本田宗一郎と藤田田だ。
本田は、
成功というものは、99%の失敗を土台にしている
といっていたし、藤田は、筆者の「失敗をされたことはないのですか?」との問いに、
思いが及ばなくてうまくいかなかったことはある。世間ではそれを失敗というのだろうが、私は違う。次に思いを及ばせてチャレンジするだけのこと。
世間でいうところの失敗は、私にとっては成功への第一ステップだ
と、答えている。
3人とも積極的に新しいことにチャレンジする経営者だが、当然のように、思うようにいかないことが多々あった。並みの経営者は、そこであきらめてしまうのだろうが、3人は違う。
その失敗から学び、失敗を踏み台に会社を成長させていったのだ。
経営の神様が教える〝人から学ぶ極意〟
いまひとつ、体験から学ぶということは、学習の第一段階にすぎないことも理解しておく必要がある。なぜなら、「ひとりの人間が、一生涯に体験できることはたかが知れている」からだ。
では、体験の次には、何から学べばいいのか。それは、自分が経験していないことを経験している人や先人の知恵からだ。
では、どうすればいいのか。
ひとつには、「聞く」ということがある。
松下幸之助は、聞くことで学ぶ人だったと、コッター(ハーバード大学名誉教授)は、指摘し、次のように書いている。
彼の言葉で好きなのは、「謙虚な心と開かれた精神があれば、誰からも、どこからも、いつでも学べる」というもの
松下翁以外にも、学校教育を受けずに名経営者になった人は数多くいるが、それらの人に共通しているのは、人の話に謙虚に耳を傾けるところにある。
『論語』に「下問を恥じず」とある。これは、下の人にも気軽に知らないことを質問できる人が優良なリーダーになれることを意味しているが、まさに松下幸之助はこのタイプだった。
また、『論語と算盤』の著書を持ち、日本資本主義の父と称される渋沢栄一が、好んで実践したのが、この教えだったと聞く。
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