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やる気を育て、人を活かすマネジメント術 第11回

社員が「自ら考え、知恵を出し、行動する」風土をつくれ

[ 疋田 文明<ひきた・ふみあき>(経営ジャーナリスト・元気塾主宰)]

自ら考える社員を育てたいなら、まず上司が指示を出すのを減らし、代わりに単純な問いを投げ続けることだ。しかし、それだけだと出てくる知恵の量はしれている。無限の知恵は、経験を通じて学習することなくしては出てこないのだ。

やる気を育て、人を活かすマネジメント術 第11回

部下が“指示待ち族”になる原因は上司にあり

 中小企業の経営者の多くが次のように嘆く。

「うちの社員は良く働いてくれる。決められたことはしっかりやってくれる。しかし、自分で考えて知恵を出して行動するということがない。いくら知恵を出せと言っても出てこない。指示待ち族ばかりで困る」

 そんな経営者に筆者は問いたい。

 社員らは、なぜ指示を待つようになったのか?

 それは、日常的に指示ばかり出しているからだ。だからこそ、指示待ち族が誕生するのだ。
 自ら考える社員を育てたいなら、まず、そのことに気がつかないといけない。

 そのうえで、可能な限り指示を減らし、単純な問いを投げ続けることだ。

「いまのやり方がいいのかどうか」
「違う方法がないのかどうか」

 常に問いを発すれば、必然的に考えるようになってくる。

 しかし、考えることはできても、仕事に役に立つ知恵は、ある程度しか出てこないだろう。
 知恵の素晴らしさは、無限に出てくるところにあるのだが、単純に考えることだけでは限界があることも理解しないといけない。

学習して得た知識が〝発想〟の肥やしとなる

 では、どうすれば無限の知恵は出てくるようになるのか。
 その答えは、2,500年も前に孔子が教えてくれている。

 吾嘗て終日食らわず、終夜寝(いね)ず、以って思う。益なし。学ぶに如かず

 孔子ですら、1日中食べず、ひと晩中眠らないで考えても、得るものはなかった。学習しないと知恵は出ないというのだ。
 無限の知恵は学習なくして出てこないということだ。

 その理由を、山本七平さんは、見事に説明してくれている。

 質のいい記憶の量を増やしていくほど、その人間の発想の総量は増える。
 天才というのは、普通の人が結び付かないと思ういくつかの概念を結び付ける人だが、天才と雖も、結び付けうる諸概念を持っていない限り新しい発想はできない。

 数年前に、ノーベル物理学賞を受賞した益川さんは、「風呂に入っているときに、アイデアが浮かんだ」といったが、風呂に入れば、誰でもいいアイデアが浮かぶわけではない。
 それまでに、頭の中に数多の情報が入っていて、たまたまそれが風呂の中で結び付いたに過ぎないのだ。

「人間は経験を通じてこそ多くを学ぶことができる」

 経営者が社員に、知恵を出してほしいと願うのなら、「知恵を出せ」というばかりでなく、学習の機会をもっと与えるべきなのだ。

 こんな指摘をすると、

「そんな時間のかかることはできない、
 すぐにでも知恵を出せる人材を育てたい」

 という経営者がいるが、まず意識的に学習する機会を与えることが、結果としていちばんの近道になることも理解してほしい。

 では、社員をどこで学ばせればいいのだろうか。
 いちばん参考になると思えるのが、カルロス・ゴーンの次の指摘だ。

 大学で勉強すればいいのでしょうか。それは違います。
 私は、大学に7年間通いましたが、そこで学んだもので仕事に役立ったのは2%ぐらいしかありませんでした。(略)人間は経験を通じてこそ多くを学ぶことができます。
 ただ漫然と仕事をしているだけではダメです。難しい問題、高い目標、そして厳しい課題に挑戦しなくてはいけません。
 なぜなら、人は課題があって初めて自分で考えるようになり、それに果敢に挑戦すればするほど、早く学習でき、知識が育まれるからです。

 社員に課題を与え、仕事を通じて学ぶ風土をつくりあげていけば、自ずと考え、知恵を出す社員が出てくると考えれば間違いない。

▼連載「やる気を育て、人を活かすマネジメント術」
著者 : 疋田 文明<ひきた・ふみあき>(経営ジャーナリスト・元気塾主宰) 1950年奈良県に生まれる。企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社、新しい経営者像の会(理事長・石山四郎)を経て、1979年に「竹村健一未来経営研究会」を企画設立し事務局長に就任。1986年に独立後はフリーランスのライターとして、企業経営、地域活性化の現場を歩き、取材を重ねる。現在は『元気塾』(経営者を対象)と『実践経営塾』(これから経営を担う人が対象)を主宰し、元気印の企業が増えることを願って活動中。
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