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やる気を育て、人を活かすマネジメント術 第2回

どこが問題? 会社の人事がダメ上司を作る

[ 疋田 文明<ひきた・ふみあき>(経営ジャーナリスト・元気塾主宰)]

なぜ、世の中の上司の多くが部下のやる気を阻害するのか? その一番の原因は、仕事の功績に昇進で報いようとする会社の人事にあった。経営の神様にして人事の名手・松下幸之助も共感する人事の要諦とは…。

やる気を育て、人を活かすマネジメント術 第2回

仕事ができるからと昇進をさせてはいけない

 多くの上司が、部下のやる気を阻害しているケースが多いのだが、その責任を上司にのみ転嫁することはできない。それは、次の逸話からも理解できる。

 ドラッカーが、経営幹部向けのセミナーで、「みなさんの中に無用の長物と思える部下をかかえている人は手を挙げて」と、問いかけたところ、参加者の多数が手を挙げた。
 そのあと、「その人たちは新入社員のときから無用の長物だったのですか」と、続けると、ほとんどが、うなだれてしまったという。

 日米を問わず、入社当初はやる気があった社員が、会社で時間を過ごすうちに、活力を失っていくのである。

 この話を聞くまでは、個々の上司に問題があると思っていたのだが、それだけではないのだ。一番の問題は、人事にあると思える。

 一般的に企業では、プレーヤーとして実績を残した人間を昇進(部下をもたせる)させ、管理職に登用する。これは、過去の業績を新しい地位で報いていることになるのだが、ここに問題がある。

 経営の神様、松下幸之助は、「人事の名手」とも呼ばれていた。松下は、人事の要諦はと聞かれたとき、次のように答えている。

「功労があった社員には、賞(金品)で報いるべきで、地位を与えてはならない。
 地位を与えるには、その地位にふさわしい識見がなければならない」

 ちなみに、この考えは松下のオリジナルではない。そもそもは、中国の古典「書経」の中に、こうある。

徳に懋(つと)めるは官に懋めしめ、功に懋めるは賞に懋めしむ

 この教えがもとになっているものであり、西郷隆盛の「南洲公遺訓」の第一条に引用された言葉でもある。

デキる上司ほど、部下にやる気をなくさせる

 個人プレーヤーとして実績を残すスキルと、チームを率いて実績を残すスキルは違う。

 プレーヤーは、専門知識と実行力があれば、成果を手にすることができる。しかし、それだけでは、「部下を活かし、育てる」という、管理職に求められる大きな使命を果たすことはできない。

 この使命を果たすには、識見がないといけない、とする「書経」の考えに、松下は共鳴し、実践していたというのだ。

 往々にして、優れた個人プレーヤーほど、部下のやる気を阻害するケースが多い。人は、仕事を任せられることによって育つのだが、出来る上司は、部下の仕事ぶりが歯がゆくて、「なんだ、こんなこともできないのか」といって自分でやってしまう。

 これでは、部下は育たないどころか、いままで持っていたやる気までなくしてしまう。

 「部下を活かし、育てる」には、どうすればいいのかを教えないままに、昇進させることの弊害は、思いのほか大きいと筆者は考えている。

▼連載「やる気を育て、人を活かすマネジメント術」
著者 : 疋田 文明<ひきた・ふみあき>(経営ジャーナリスト・元気塾主宰) 1950年奈良県に生まれる。企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社、新しい経営者像の会(理事長・石山四郎)を経て、1979年に「竹村健一未来経営研究会」を企画設立し事務局長に就任。1986年に独立後はフリーランスのライターとして、企業経営、地域活性化の現場を歩き、取材を重ねる。現在は『元気塾』(経営者を対象)と『実践経営塾』(これから経営を担う人が対象)を主宰し、元気印の企業が増えることを願って活動中。
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