「交際費」はなぜ損金に算入できないのか?
「交際費を使ったら、その倍の額以上の利益を出さないといけない」
こんな話を聞いたことがありませんか? そんなことを言うのも、交際費は他の経費と違って、損金に算入できないからなのです(ただし、中小企業の特例などはありますが、原則として損金に算入できないと考えてください。詳細は、第2回「1人10万円の接待ゴルフと1人5,000円で20人接待するのとどちらがトク?」で解説します)。
売上を上げるための支出なのに、どうして交際費は経費に算入することができないの?
それには理由があります。
かつて(といっても昭和30年代とか40年代のことですが)「社用族」という言葉があるくらいに交際費を派手に使って、接待する側も自腹ではとても入れないような高級店で飲み食いできる良い(?)時代がありました。
お役人や取引先を派手に接待し、かかったお金を会社の経費とすることに社会的な批判が強まり、その結果、
「交際費は、会社の経費にしないことにする」(=交際費等の損金不算入)
という税制が誕生したのです。
「交際費の倍以上利益を出さないといけない」と言われた理由
経費にできないとどうなるか? それを数値例で示してみましょう。
A社とB社は、それぞれ会社の収益が1,000万円で経費が600万円、利益が400万円です。違うのは、A社は宣伝費を100万円、B社は交際費を100万円支出している点です。
上表に「課税所得」欄がありますが、交際費が課税所得の計算のなかで損金にならないため、A社とB社とでは税引前利益と課税所得に100万円の差が出てしまいます。それによって、B社が払う法人税が増えてしまい、税引後の利益がA社より50万円だけ少なくなるのです。
ちなみに、この数値例では法人税率を50%としています。これは交際費等の損金不算入の制度が導入された当時、利益に50%の法人税がかかっていたため、そうした設定にしました。
なるほど!「交際費の支出額×50%の税率」分だけ、A社よりB社の税引後利益が減るわけか…。
では、B社が交際費100万円の効果でA社と同じだけの利益を出すには、売上高がいくら必要か見てみましょう。
同じく100万円の交際費で売上高が1,100万円になれば、A社と同じ150万円の税引後利益を出すことができます。
ということは、宣伝費などの場合、100万円の支出に対して100万円以上の粗利を出せば、取りあえず元は取ったことになりますが、交際費の場合は、100万円の支出に対し、200万円以上の粗利を出さないと元を取ったと言えません。
これが、「交際費は使った額の倍以上の利益を出さないといけない」の意味合いです。
- ▼連載「会計士が営業に教えたい「交際費」の話」