年末に向けて毎月の定例事務のほか、冬季賞与の査定・計算・支給事務、年末調整など、経理担当者は多忙をきわめます。
特に年末調整については、11月から準備を進める必要があります。この時期、税務署や市区町村などで年末調整事務の説明会が開かれますから、できる限り出席して、事務の要点をチェックしておきたいものです。
あわせて、各種控除申告書などの関係書類を早めに入手し、社員に配付します。このとき、年末調整に関する注意事項や、控除を受けるために必要な控除証明書などが一覧できる資料を作成し、一緒に配るとよいでしょう。
年末調整に関する事務手続きや留意点については、10月20日発行の増刊特大号『平成30年版年末調整の進め方と平成31年の税務・保険事務の手引き』を参照してください。
年末から年度末にかけての資金計画の見直しと資金手当て
冬季賞与の支給、歳末商戦など何かと資金が必要な時期を迎えます。年度末にかけての資金計画を見直し、借入が必要な場合には、金融機関に提出する書類の準備を進めます。
年末に増えがちな商談や会合、打合せの費用など、細かい支出もしっかり管理したいところです。
3月決算法人の中間申告・納税
3月決算法人は、11月が中間申告・納税の時期にあたります。
中間申告には、前事業年度の納税額の2分の1を納付する予定申告と、仮決算による実績申告の2種類があります。事務負担も含めて都合のよい方法を選択しましょう。
ただし、仮決算した場合の法人税額が前期基準額(前事業年度の確定法人税額の2分の1)を超える場合、選択できるのは予定申告による方法のみとなっています。
歳末セールの税務対策
歳末セールの実施に際しては、値引販売や販促費の支出、催事企画の費用、パートタイマーやアルバイトの人件費など、例月にない売上形態や費用が発生します。
これらの費用は、営業の現場で突発的に発生するものも多く、税務上、不適切な処理をしてしまう可能性がありますので、費用支出・売上計上の方法についてチェックしておきましょう。
得意先管理と売掛金の回収
冬物商戦用の仕入、3月決算法人の中間納税などの必要資金を確保するためにも、得意先管理を徹底し、売掛金の完全回収に努める必要があります。
営業に対して滞留売掛金の状況や支払いの悪い得意先をまとめた資料を提供するなど、積極的にサポートしていきましょう。
また、経理から残高確認書を送って残高確認を行なうことも、モレのない回収につながります。
多忙時のミス撲滅
年末に向けての繁忙期には、思いがけない処理の誤りやモレが生じがちです。慣れているつもりの業務も気を抜かず、入念な事前準備とダブルチェック、フォローの徹底など、ミスが起きにくい体制を整えることが大切です。
被災社員へのアドバイス
社員が災害等で損害を受けたときには、所得税の雑損控除か、災害減免法による所得税の軽減または免除のいずれかを選択適用できます。
【雑損控除】
災害(震災、風水害、冷害、雪害、落雷、火災など)、盗難、横領による損失が雑損控除の対象で、次のいずれか多い額を所得から控除できます。
①差引損失額-総所得金額等×10%
②差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円
※差引損失額=損害金額+災害等に関連したやむを得ない支出の金額-保険金などにより補てんされる金額
なお、損失額が大きく、その年の所得金額から控除しきれないときは、翌年以後(3年間が限度)に繰り越して、各年の所得金額から控除できます。
【災害減免法】
災害によって受けた住宅や家財の損害金額がその時価の2分の1以上で、かつ、災害に遭った年の合計所得金額が1000万円以下の場合には、所得税額が軽減または免除されます。
・合計所得金額500万円以下
→所得税額の全額を免除
・同500万円超750万円以下
→所得税額の2分の1を軽減
・同750万円超1000万円以下
→所得税額の4分の1を軽減
また、被災の状況によっては支援金が支給される被災者生活再建支援制度の対象にもなります(今年は平成30年島根県西部地震、平成30年7月豪雨、平成30年北海道胆振東部地震による災害等が適用対象)。
そうした利用可能な制度がないかについて情報収集し、本人にも確認をすすめましょう。