Q 在庫を担保に取りたい!何をすればいい?
A 集合動産譲渡担保の活用によって、取引先が有する在庫を担保として取得できます。
解説
在庫商品を担保取得する際の注意点
店舗や倉庫等に保管されている商品は、一般市場価格での換価は比較的容易な場合もあり、まとめれば相当高価になることもあります。債務者の保有する商品を担保に取り、商品の売却代金から債権の回収を図ることができます。
在庫商品を担保に取る際は、必ず現地に出向き現物の存在を確認する必要があります。現物が債務者の倉庫内にあったとしても所有者は別の第三者である場合もあるため、目的物に所有権留保の表示等が付いていないか等を確認する必要があります。
評価方法
担保対象物は、市場価値を基準として評価しますが、希望小売価格と市場価格は一致しないことが一般であるため、50~60%の掛目を乗じて評価する必要があります。生もの等は換価が遅れると逆に処分費用が発生するため、目的物が換価しやすいものであるかにも注意が必要です。倉庫内にある商品は日常の取引の中で絶えず入れ替わるため、担保の対象は、種類・所在場所・量的範囲を明確にする必要があります。
集合動産譲渡担保の設定
目的物の担保としての価値が確認できたら、集合動産譲渡担保を設定します。設定において、まずは譲渡担保設定契約を締結します。集合動産譲渡担保の設定に際して、個々の目的物を契約書で特定することはできませんが、所在場所および種類等を明記することで、担保目的物の範囲を特定します。
たとえば、倉庫やその他の建物や場所を特定して、その中にある一切の商品、といったような定め方です。
第三者対抗要件の具備
集合動産譲渡担保の第三者対抗要件は引渡しであり、通常は占有改定を行います。占有改定とは、民法が定める引渡方法の1つであり、ある目的物の占有者が、その目的物を手元に残したまま占有を他社に移す行為のことです。通常は、譲渡担保設定契約書上で、占有改定によって目的物を引き渡すことが明記されます。また、動産譲渡登記ファイルに登記がなされた場合も、上記の引渡しがあったとみなされ、第三者対抗要件となります。
対象物の継続的なチェックが必要
集合動産譲渡担保は、実行時に価値のある商品が多数あり、引渡しを受けてからスムーズに売却処分できれば、担保としての有効性が高いものの、目的物の内容が絶えず変動しているため、実行時に不良在庫が過剰であったり、商品が範囲外の倉庫等に搬出されていた場合は、担保としての効果は全く期待できません。
したがって、債権者としては、債務者に在庫状況の報告義務を負わせるだけでなく、価値ある商品が指定した場所に保管されているか、定期的な実地調査を行い、絶えず注意する必要があります。特に、債務者に信用不安が生じた後では、債務者や第三者によって商品が搬出される危険性が高まります。
出典:本記事は、『取引先リスク管理Q&A』(リスクモンスター データ工場 著)からの転載です。
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