Q 支払遅延が発生した! まず何をしたらいい?
A 支払遅延となった原因を確認します。
回収異常の原因は、取引先だけにあるとは限りません。請求漏れや請求金額の相違など、まずは自社からの請求内容に誤りがないかを確認しましょう。自社の手続にミスがない場合には、取引先に原因があるものと考えられますので、取引先に連絡し、支払遅延の原因について確認する必要があります。
法的整理を行う際には、事務所の入り口に、整理内容や代理人弁護士の連絡先などが記載された通知が掲示されていることが多いので、通知が掲示されている場合は、内容を確認し、どのような手続に移行するのかを把握する必要があります。
確認の結果、倒産の事実が明らかになったら、自社の債権の回収見込みについて検討しなければなりません。
解説
社内手続の確認
入金異常の原因が自社内にある場合には、以下のことが考えられます。
- 請求漏れ
- 請求内容(数量・金額・支払期日)の相違
取引先へのヒアリング
取引先の支払遅延の原因としては、「資金繰りには問題ないが事務手続のミスによって支払遅延が生じた場合」と「資金不足によって支払遅延が生じた場合」の2つに分けられます。
前者であれば、速やかに入金の約束を行い、約束どおり入金確認ができれば大きな問題はないと考えられますが、あまり頻繁に生じる場合には、管理体制に不安があると捉えることができます。
後者の場合には、支払いの意向を確認したうえで、支払方法、支払日などをできるだけ明確に約束するように努めるべきです。また、取引先へのヒアリングは主に営業担当者が行いますが、その際には、取引先へ肩入れすることなく、客観的に事実を把握する姿勢に心掛けることが重要です。
取引状況の確認
支払遅延が発生した場合には、以下の取引状況を確認し、いつでも回収活動に移行できる準備を整えましょう。
- 債権、債務、契約残(契約締結後、一部が履行されたのみで、契約内容全体としては、未了状態にあるもの)がどのぐらいあるか。
- 契約書はどのような内容(条項)で締結されているか。
- 自社が納入した商品の所在はどこか。
- 担保や保証人など、保全状況はどうなっているか。
支払遅延発生時の対応方法
資金不足による支払遅延の場合、近い将来に取引先が倒産する可能性もあることから、いち早く債権の回収・保全の準備をしなければなりません。
まず、取引先と取引を継続する必要がある場合には、「取引量の縮小」や「支払サイト短縮」、「支払方法の変更」などを検討する必要があります。特に支払方法を「第三者振出手形の裏書譲渡」や「前払い」に変更することは、その後に発生する債権に対して、有効な保全策となりますので、是非とも積極的に打診したい点です。
一方、取引を中止したい場合には、「出荷停止」や「契約解除」などを検討する必要があります。いずれも一時的な支払遅延というだけでは、取引先に対して提示する要件として十分ではない可能性がありますので、取引基本契約書に「出荷停止条項」や「契約解除条項」の記載がない場合には、「不安の抗弁権」を行使できるように、「取引先の経営状態の把握」や「取引先への追加担保の打診」などを先方に行う必要があります。
出典:本記事は、『取引先リスク管理Q&A』(リスクモンスター データ工場 著)からの転載です。
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