社員の約半数が自転車通勤する異色のIT企業
自転車通勤で朝から体を動かし、夜はほぼ定時で帰宅する――およそ一般的なIT企業のイメージとはかけ離れたスタイルの会社がある。ブログサービス『はてなブログ』などで知られる株式会社はてなだ。
2001 年、近藤淳也氏(現会長)が京都で設立した同社は、現在、京都と東京の2拠点体制で新しいサービスの提供に邁進している。そんな同社の生産性向上に一役買っているのが「自転車通勤支援」だ。
事業が継続できるのも社員の健康あってこそ。目指すは「長く働いてもらえる会社」だという。
もともと近藤氏が自転車に造詣が深く、創業当初より自然発生的に始まったという自転車通勤。制度として整備されたのは 2005 年で、現在、アルバイトも含め全社員の半数弱にあたる 40 名ほどが自転車で通勤している。
「朝、ぐったりしながら満員電車に揺られて通勤するより、自転車を使って自分のペースで汗をかきながら通勤するほうが、気分がすっきりとして脳も活性化されます。定期的に身体を動かすことで健康づくりにも役立ちますし、体調が良いとそれだけ仕事がはかどります。
自転車通勤を推奨した根底には、“生産性の向上に寄与するため”という考えもありました」(人事・総務部長松田光憲氏)
駐輪場の確保や運転マナー講習を実施し、社員の自転車通勤を支援
▲社員の健康維持に一役買っている自転車通勤支援
京都・東京ともに、同社ではオフィスの近隣の駐車場を数区画借り受け、駐輪場として整備・管理している。
東京都では 2013 年から自転車通勤を推奨する企業には駐輪場の確保が条例で義務付けられたが、はてなはそれ以前から取り組んでいたこともあり、必要台数分を確保。とはいえ、最初はなかなか理解が得られず、オーナーに「駐車場を駐輪用スペースとして貸してほしい」と申し入れても断わられるばかりで、駐輪場の確保には苦労したそうだ。
また、オフィスの半径5キロ圏内に在住する正社員に「近距離通勤手当」として月に2万円を支給しているが、対象者はほぼ自転車通勤のため、実質的には同額の手当が支給されていることになる。自転車通勤自体は半径5キロ圏の外からでも可能だ。
このほか、もしもの場合に備えて会社負担で保険金額が1億円ほどの損害賠償責任保険に加入したり、東京オフィスで警察による運転マナー講習を開催したりするなど、自転車通勤に関するリスク管理も徹底。講習では京都オフィスとテレビ会議システムでつなぎ、自転車シミュレーターを利用して道路のどのような場所に注意が必要かなどの説明を受けた。
積極的な取り組みが功を奏し、これまでに大きな対物・対人事故は起きていないそうだ。また、社員のマナー意識の高さもあって、2009 年には「エコ通勤優良事業所」にも認定された。
事業成長と働きやすさの両方を重視。働きがいのある会社を目指す!
自転車通勤以外にも、週末にツーリングに出かけたり、山登りをしたりと、同社の社員の多くは健康志向が強くスポーツ活動に熱心だ。
また、朝は定時に出勤し、昼の休憩1時間を挟んで、夜は7時〜8時で大半の人が帰宅する。
各人が時間管理をきっちりと行ない、余暇を充実させて心身への負担を軽減するというのも、全社的な健康志向の表れだろう。
「当社のミッションの1つは『事業成長と働きやすさを高次元でバランスさせ、働きがいのある会社を目指します』というもの。
労働力を搾取するような働き方をさせて、社員が数年で疲弊して辞めていくというのは会社にとって絶対に良いことではありません。残業がなく、10 年 20 年と長く働いてもらえるような体制をつくるほうが、中長期的にはずっと会社のためになります。自転車通勤制度などの福利厚生もその一環です。
社員1人ひとりが成長し、それが会社の成長にもつながるものなら、これからも積極的に導入していきたいですね」(松田氏)
会社紹介
株式会社はてな
所在地京都市中京区、東京都港区
業務内容ウェブサービスの開発・運営
社員数97名(アルバイト含む)
http://hatenacorp.jp/