たいていの場合は誰が申告したのかを教えてもらうことができます。ただし、申告人が在職中であるなど使用者に不利に扱われる恐れがある場合、使用者への氏名の秘匿を希望するときには、例外的に、定期監督を装って臨検監督が行われます。
申告監督は「申告人を救済すること」を主目的とする
申告監督とは、労働者(申告人)が、自分の働いていた(もしくは働いている)会社について、賃金未払い等の法違反があることを労働基準監督署に申告し、それに基づいて労働基準監督官が行う臨検監督のことです。
申告監督では、申告人を救済することが主な目的とされ、申告があった内容を中心に調査が行われます。
このような申告監督の性質からすれば、その実効性を高めるためには申告人の名前を明らかにすることが重要であるため、大半の場合には、労働基準監督官は会社に対して誰が申告人であるかを告げたうえで申告監督を行います。
もっとも、申告人の中には、まだその会社に在職中であるなど、申告したことが会社にバレてしまうと実質的に不利に扱われる恐れがあることから、会社への氏名の秘匿を希望する人もいます。
そのような場合には、定期監督を装って臨検監督が行われるので、申告人の氏名はおろか、実際は申告監督であることすら教えてもらえません。
定期監督を装った「申告監督」を見分けるポイント
このように、労働基準監督官が定期監督として訪問する場合には、①本当に定期監督である場合と、②実際は申告監督だけれども定期監督を装っている場合の2種類があるのです。
両者の見分け方についてですが、下記のような場合には、②実際は申告監督である可能性が高いと考えられます。
- 残業代未払いや長時間労働について思い当たるフシがある
- 従業員の間で不満が蓄積しているようだが、会社に対して意見を言えるようなシステムがない
なお、申告人が誰であるかがわかった場合において、会社として法違反があることが事実であるとすれば、その申告人との和解交渉を進めることが得策であると言えます。
なぜなら、前述のとおり申告監督は「申告人を救済すること」を主な目的として行われるので、会社との和解によって申告人が救済されたとすれば、労働基準監督官としてもそれ以上厳しく監督をしてくる可能性は低いと考えられるからです。
逆に、会社がその申告人に対して、申告したことを理由に解雇等の不利益な取扱いをすることは労働基準法で禁じられています(労働基準法第104条第2項)。
この規定に違反した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の刑を科されることがありますので十分注意してください(労働基準法第119条第1号)。
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