財務省によると、2015年3月末時点の「国の借金」残高は 1,053兆3,572 億円 にのぼります。これは、国民1人当たり約 830 万円の借金を抱えている計算です。一方、総務省が発表した昨年10月1日現在の推計人口では、総人口が前年より 21 万人以上減るなかで、65 歳以上の高齢者は 110 万人増えて 3,300 万人となりました。初めて0~14歳の年少人口の2倍を超え、少子高齢化が一段と進んでいることがわかります。
高齢者の増加で社会保障費の増大が見込まれる一方、人口減少は国内総生産(GDP)の縮小をもたらします。将来への不安から庶民の財布の紐が固くなるのも当然で、アベノミクスにより株価が上昇しても、多くの中小企業や国民が景気の良さを実感できないのも無理からぬところでしょう。
そうしたなか、平成27年度税制改正案が年度末ぎりぎりの3月31日に成立しました。
法人税率を引き下げる一方で、課税ベースを拡大
今回の改正の目玉は、やはり法人税率の引き下げでしょう。「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」との基本方針の下、基本税率を 25.5% から 23.9% へ引き下げる一方で外形標準課税の拡充や欠損金の繰越控除限度額の引き下げなどが盛り込まれました。
平成27年度の改正内容を見る限り、中小企業にダイレクトに影響するような改正は少ないように思えますが、
「今年度の改正は、来年度以降の中小企業をターゲットにした大改正の地ならしと見ることができます」
というのが、本セミナーの講師・平山憲雄先生の意見です。法人税の実効税率を 20% 台へ引き下げつつ 2020 年度の基礎的財政収支黒字化目標を達成するには、課税ベースの拡大が不可避。そこで平成28年度以降の税制改正では、いよいよ全法人の 99% を占める中小法人の課税ベースをいかにして増やすかがテーマになってくる、というわけです。
「政府税調では、中小法人への外形標準課税の適用もテーマになっています」(平山先生)。
来年度の税制改正の行方に注目です。
講師のご紹介
平山 憲雄 氏
(税理士。平山憲雄税理士事務所所長)
1978年、税理士試験合格。82年に独立開業。以後、中小企業経営のコンサルティングを中心に、執筆活動、講演等でも活躍。著書に『社長!こんな税理士が会社をダメにする』(日本実業出版社刊)など。