知財分野におけるデジタル化や国際化の進展などの環境変化をふまえ、時代の要請に対応した知的財産制度の見直しが行なわれています。
その範囲は多岐にわたり、たとえばブランド・デザイン等の保護強化では、次のような改正があります。
登録可能な商標の拡充
他人がすでに登録している商標と類似する商標は登録できませんが、先行商標権者の同意があり、出所混同のおそれがない場合には登録可能となります。自己の名前で事業活動を行なう者等がその名前を商標として利用できるよう、氏名を含む商標も、一定の場合には、他人の承諾なく登録可能とされます。
意匠登録手続きの要件緩和
創作者等が出願前にデザインを複数公開した場合の救済措置の意匠登録手続きの要件が緩和されます。
デジタル空間における模倣行為の防止
商品形態の模倣行為について、デジタル空間における他人の商品形態を模倣した商品の提供行為も不正競争行為の対象とされ、差止請求権等を行使できるようになります。
営業秘密・限定提供データの保護の強化
ビッグデータを他社に共有するサービスにおいて、データを秘密管理している場合も含め限定提供データとして保護され、侵害行為の差止請求等が可能となります。損害賠償訴訟で、被侵害者の生産能力等を超える損害分も、使用許諾料相当額として増額請求が可能となるなど、営業秘密等の保護が強化されます。
特許法、実用新案法および意匠法について、特許権者の意思によらず他者に実施権を認める裁定手続きにおいて、提出書類に営業秘密が記載された場合に閲覧等を制限することが可能となります。
ブランド、デザイン等の保護強化のほか、コロナ禍・デジタル化に対応した知的財産手続き等の整備として、送達制度や書面手続きのデジタル化、手数料減免制度を見直し、国際的な事業展開に関する制度整備として、外国公務員への贈賄に対する罰則の強化・拡充、国際的な営業秘密侵害事案における手続きの明確化が行なわれます。
この改正は、一部を除いて公布の日から1年以内に施行されます。
安全基準の国際化対応
国際基準にあわせ、運転者席から死角となる車両の直前や側面にいる歩行者等を確認できるよう、乗用車等に視認装置等の備付けを義務付けるなどの措置がとられています。
(令和5・6・5国土交通省告示第572号=道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等の一部を改正する告示)
エネルギー政策の明確化
地域と共生した再生可能エネルギーの最大限の導入促進と、安全確保を大前提とした原子力発電所の60年超の運転を可能とする「GX脱炭素電源法」が成立しました。
(令和5・6・7法律第44号=脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律)
公害防止管理者試験の料金改定
公害防止管理者と公害防止主任管理者の資格を取得する際の受験手数料の額が改定されました。
(令和5・6・7政令第202号=特定工場における公害防止組織の整備に関する法律施行令の一部を改正する政令)
マイナンバーカードの使途拡大
マイナンバーカードの利用範囲が拡大され、健康保険証との一体化などが進められます。
(令和5・6・9法律第48号=行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律)
入管制度の見直し
紛争地から逃れた人などに難民に準じた在留資格を与える「補完的保護対象者」制度が創設されるなど、在留資格がない外国人らの処遇を見直すため、出入国管理法が改正されました。
(令和5・6・16法律第56号=出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律)