多くの会社では、新たに社員を採用した場合に一定期間の試用期間を設けており、その長さは通常3か月程度が標準となっています。研究開発部門などの場合であっても、6か月が限度であると思われます。
試用期間内での解雇の有効性
試用期間内に解雇する場合については、その期間に上司や人事担当者がきちんと勤務の状況を観察していることが重要となります。
現実問題として、日本では一度採用した正社員の解雇は、よほど合理的な理由がない限り難しい状況にあり、特に本人の能力不足や勤務状況不良を解雇理由とする場合、その証明が非常に難しくなります。
しかし、試用期間内であれば、前出のような理由であっても解雇が有効となることが多いのです(下記判例を参照)。上司や人事担当者は、新卒採用・中途採用のいずれにおいても、試用期間をきちんと観察期間ととらえ、業務の繁忙を理由に「とりあえず本採用」などといった対応を絶対に行わないようにしましょう。
試用期間中の解雇が認められた判例
試用期間途中での、勤務状況不良による業務不適格を理由とする解雇の効力一般に、試用期間の定めは、当該労働者を実際に職務に就かせてみて、採用面接などでは知ることのできなかった業務適格性などをより正確に判断し、不適格者を容易に排除できるようにすることにその趣旨、目的があるから、このような試用期間中の解雇については、通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められるというべきである。
[ブレーンベース事件 東京地判 平13.12.25]
被告就業規則記載の「従業員として不適格と認められるとき」とは、従業員として求められる能力や適性を著しく欠いている状態を意味すると解するのが適当である。原告は、事務処理能力が大幅に劣ることを考慮すると、普通解雇事由が存すると認められる。
[三井倉庫事件 東京地判 平13.7.2]
参考:試用期間についての就業規則への記載例
第**条 会社は、新たに採用した者に対して採用の日から3か月間の試用期間を設定する。試用期間中または試用期間満了のときに 本採用が不適格と認められる場合には、解雇を通告する。
2.会社は必要があると認められるときは、前項の試用期間を本人に通告の上、3か月を限度として延長することがある。
- ▼連載「やってはいけない会社の人事」